勇者はいつも全裸で登場する

第74話 エロ同盟のように

「てっめえ！　ふざけやがって！」

「そうよ！　そんな大事なこと、ちゃんとあたしたちに相談してよ！」

　俺は今、学校の屋上であいつとコムスメに追い詰められている。

「だからこうやって話をしてんだろ。これからどうしたらいいんだか……」

「ロリショタが地球侵略！　最高じゃねえか！　なんでもっと早く言わねえんだよ！　おお、ロリの神よ……」

　あいつは空へ向かって拝みだした。なんで俺、こんな奴に友情的なものを感じてたんだろ。

「悪いコムスメ。やっぱあいつ抜きで話を進めたい」

「う、うん。ごめんね、あんなんじゃ相談できるわけないよね……」

　コムスメは納得してくれた。さすが俺の次に常識のある奴だ。

「それで、侵略するかしないかはさておき、魔王は倒したいんだよね？」

「ああ。だけどそれが侵略のトリガーになるかもしれないから困ってるんだ」

「大丈夫……って言い難いなぁ。かなり混乱するんだよね」

「どういうことだ？」

　コムスメの話によると、前にも言っていたが俺がいるときといないときでちとえりらの態度が全く違うという話に繋がる。

　とても地球を侵略するようには思えないと。くっそ、上手いことコムスメらに取り入ったわけだ。

「やっぱ様子を見ながら考えるしかないのかなぁ。相談しろって言ったくせになにも出せなくてごめんね」

「俺だってすぐ解決方法が出せなかったんだし、それを期待するのも悪いだろ。それより今後継続して考えてくれりゃいいよ」

「きみはほんと、変なところで寛大だよね。うんまあ悪くはないんだけど」

　悪くないんだったらいいじゃないか。いちいち言う必要ないだろ。

「そんなわけだから一応──」

「んでよ！　いつ日本がロリショタ王国になるんだ！？」

　永遠にならねえよ。もし兆が一そうなったとしたら俺は首をくくるからな。

「──そんなわけで、今後はお前らを監視することにしたから」

「いいね」

　なにがいいんだよ。てかこいつ露出狂っぽい癖があったな。あらかじめ釘を刺しておかないと。

「あーあと監視っつーのは常に見てるわけじゃないから脱ごうとしてる手を止めろ」

「ちっ」

　悔しそうな顔で服にかけた手を止めている。ほんとこいつはどうしようもないな。

「てかレクシー様は昨日の話、どう思いました？」

「そうね、少々……どころではなくかなり驚かされたけど、正直なところ答えを出しかねるのよ」

「ですよねぇ」

「ちっ、クソガキが同意してんじゃないわよ」

　仕方ないじゃないか、俺だって同じ意見なんだから。コムスメでさえ同じだ。

　あとあいつは……あいつは病気だ。永遠に治らない類のな。

　そういや小児性愛好者は脳の異常という話だっけ。俺のような正常な脳では理解できないのも納得だ。

「で、レクシー様。ちとえりたちの真意はともかく、俺は魔王を倒しに行こうと思うんですが」

「ん……あ、ああそうよね。そうだわ。……そうだわ！」

　突然なにかに気付いたのかレクシー様が声を大きくし、ちとえりは驚いた。

「な、なんね？」

「そうですよ。ちとえり様たちがいなくなろうとなかろうと、魔王を倒して頂ければ私らにはなんの不都合がないということです！」

　ここが崩壊しないことがわかった今、魔王さえ倒してしまえば今まで通り暮らせるわけで、その後にちとえりたちが消えてもレクシー様は困ることがない。

　つまりレクシー様は俺と同じ視線で考えることがなくなったというわけだ。くっ、この世界は敵だらけじゃないか。

「勇者様、私を忘れてはいけませんわ」

「シュシュだって立場は一緒だろ」

「いいえ、全く異なってしまいますわ」

　んー？　あー、そういうことか。

　ようするにちとえりたちの国とシュシュの国が隣接しているということだな。通常なら隣国が丸々手に入ってラッキーといった感じだが、なにせ４０キロ以上の高さのある崖の上だ。そう簡単に行き来できるわけではない。移動村を雇い１週間以上だ。

　上から送る分には落とすという手がある。だが不自由であることには変わらない。

　あと、もし魔物でなくとも危険な生物が大繁殖したらどうなる。救助する間もなく悲惨な目に合う。シュシュはそういった面を懸念しているのかもしれない。

「よしシュシュ、ここは同盟を組もう」

「是非お願いしますわ！　私と勇者様ふたりだけの同盟。うふふ、うふふふふ」

「だから変な気を起こさず俺の味方になれよ」

　妙なテンションになっているが、まあそれはいい。これでシュシュからもアイデアをもらえるのは助かる。

「味方ですね！　絶対お間違いございませんね！？」

「ああ味方だから俺のズボンを下ろすのはやめろ！　変な気は起こすなって言っただろ！」

「なにをおっしゃってるんですか！　味方である以上、味の方を確かめねばならないですわ！」

「なんの味だよ！」

「まずは股間からですわ！　イッツテイスティングタイム！」

　くっ、こいつは味方なんかじゃない。共通の敵の前で手を組んでいるだけの存在だ。危うく間違えるところだった。

「勇者様！　私のことも忘れないで下さい！」

「ええー。だってごくまろ、ちとえりの手下じゃん」

「手下なんかじゃありません！　この世界が崩壊しないとわかった以上、私は心も体も勇者様のものです！」

　うーん、あまり欲しくないなぁ。可愛さで言えばかなりなものだと思うが、それは俺にとって魅力的じゃない。

　それならば大人びているシュシュのほうが圧倒的にいい。といってもゼロになにを掛けてもゼロなんだけどな。

「ごくまろ、裏切る気ね？」

「えーっ、だってぇー、不要なことをしたせいで勇者様に嫌われるのイヤだしぃー」

「くぬぅ、ごくまろがギャルチックになるほど拒絶しているね」

　ギャルチックになったごくまろはとことん刃向かうからな。だが今は味方だ。ギャルチック歓待。

「勇者様！　私もいますからね！」

「とくしまはごくまろのおまけだろ」

「違います！　私たちのおまには毛なんて」

「おーっと黙ろうか。最近は各方面がうるさいからな」

　俺は健全勇者なんだよ。下品な発言は許さん。

「とにかくですね、私は私の意志で勇者様についていきたいんです！」

「その心は？」

「今取り入れば夜の奴隷くらいにはなれそうな気がしたんです」

　永遠に無理だから諦めろと言いたいところだが、俺も鬼じゃない。チャンスくらいはやろう。

「今後の活躍次第だな。俺の期待を上回ってくれれば深夜奴隷にもなれるぞ」

「なっ！？　そんな素晴らしい職に！？　頑張ります！」

　まあがんばってくれ。

　ちなみに俺の期待は、身長１６０センチ前後、見た目２５歳くらいのお姉さま、胸はできればＦ以上かな。あと常に黒スト着用は義務だから。

　この内容はもちろんとくしまに伝えない。自ら気付いてくれるという期待があるからな。

「さてちとえりさんよぉ。これで４対１だな」

「ぬぎぎっ。違うね！　３対４ね！」

「ゆーなとレクシー様は中立だろ。勝手に含めるな」

「なに言ってんね！　私は中立ね！」

　……そういえばそうだった。