第12話 尿と勇者
「────申し訳ありませんでした!」
とくしまが土下座している。小さな子に土下座させるとか、傍からするとどれだけ鬼畜に見られてしまうんだ。
「いやもういいから」
「そうはいきません! 私の不始末は私がなんとかします! ……えっとまず……綺麗にしないといけませんね。く、口で……」
「ごくまろ、水を出してくれないか?」
とくしまは本当に悪いと思っているのだろうか。
なんだかM体質の人間は謝りつつも自分の欲求を満たそうとしている気がする。
「コラとくしま! 11歳にもなっていくらなんでもおねしょはないでしょ!」
「違うんです! 確かに私はおねしょをしました。ですがこれは勇者様も悪いのです!」
えっ俺!?
勝手に俺のせいにされても困る。
「勇者様のせいにしてはいけません!」
「だっ、だったらあのゆらゆらぽかぽかをしてもらってみてください!」
いつの間にか変な名前をつけられてしまった。
だけど他の何かのせいにしたい気持ちはわからないでもない。俺がもしおねしょをしたならば、まず自身よりも他の何かを疑うだろうし。
でもそれは愚策だ。もしこれで他の人がなんともなかった場合、完全に追い詰められてしまうからだ。
まあもしこれで他の人も同じことになれば立証できるから、諸刃の剣なわけなんだが。
「あの、勇者様。よろしいでしょうか」
「別にかまわないけど……」
ごくまろは俺と同じ17歳。間違ってもおねしょをするなんてことはないだろう。
俺は腰にシーツを巻き濡れたズボンを脱ぎ、その上へごくまろを乗せる。
そして自分の体ごとゆっくりと左右へごくまろを揺らしていく。
「あっ、これは……これ……は……」
あっという間に寝てしまった。
そして1時間後、俺の腰に巻いたシーツはびしょ濡れになっていた。
「も、申し訳ありませんでした!!」
そしてごくまろは平謝りだ。もういいよと言っても土下座から顔を上げようとしない。きっとあまりにも恥ずかしくて顔を向けられないのだろう。
このままでは
「もう大丈夫だから、それ以上謝らないでくれよ」
「で、ですが……」
17歳でおねしょという羞恥に加え、先ほどまでとくしまをしかっていたのだ。なのに同じことをしてしまったら面目が立たない。
「全く、2人とも酷い有様ね」
「そう言ってやるなよ変態の大将」
瞬間、ちとえりは俺に襲いかかってきた。
「このクソガキ! 剥いてやる!」
「俺のはもう剥けてるから!」
「確認するね!」
「ごめんなさい勘弁してください!」
チクショウ、なんでこいつだけこんなに力があるんだ。
「全く、こんな小便臭い
「いやまあ本当に小便臭いが……だったらお前もやってみろよ」
「そうです、ちとえり様もゆらぽかがどれほどのものか試すべきです!」
変な名前を付けられたと思ったら、略称までできていた。
「構わないね。これでも24歳ね! おねしょなんてしたら切腹ものね!」
というわけで俺は腰に毛布を巻き、ちとえりを膝の上に乗せた。
「これは魔性の業なのね……」
ちとえりは愕然とし、四つん這いになっている。そして俺の毛布は例に漏れず濡れている。
「ほら、ちとえり様だってそそうしたじゃないですか!」
「ち、違うのね! これはその……潮なのね!」
「余計酷いじゃねぇか!」
おねしょは生理的なもので仕方ないと解釈できるが、それは違う。
こいつの頭のなかではきっと、大人がおねしょをするのは恥ずかしいことだが、潮を吹くのはおねしょほど恥ずかしいことではないとでも思っているのだろうか。
でもあれって確か成分的には尿であるとかそんなんじゃなかったか? よく知らないけど。
「とにかく、今後はお前らにあれをやることはない」
「そ、そんなぁ……」
とくしまとごくまろは非常に残念そうな顔をする。
そんな顔をされても被害者は俺だ。絶対にやらんぞ。
というわけで、俺たちは馬車を止めみんなで下着洗いをするはめに。
「勇者様のズボンは私が濡らしたので私が洗います!」
「嫌だよ自分で洗うから。シーツと毛布洗ってよ」
「じゃ、じゃあ濡れた股間を洗わせてください!」
それこそ嫌だ。だがこのまま自然乾燥させるわけにもいかない。
「おいちとえり、風呂入ってくるから地球に戻りたいんだけど」
「いやいや、ここはとくしまと一緒に私も洗わせて欲しいのね」
「……城中にお前が寝小便たれたことをバラすぞ」
「くっ……殺せ!」
ちとえりが心底悔しそうな顔をしているため、少し気が晴れた。
「大体、時間があまりないんだろ。ふざけてる余裕あんのか?」
「ううぅ……仕方ないのね」
やっと戻れる。
でも風呂に入ったらまたここへ戻らないとな。
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