最終部
「どうするつもりだ? ヘンゼルを倒せば冥界からの信仰で復活し、グレーテルを倒せば現世からの神の加護で復活する。これでは埒が明かん」
現世に意識を戻し、事の顛末を説明したパンドラに、赤ずきんは表情を曇らせる。
「決まっている・・片方ずつがダメなら、双方同時に倒すまでだ」
「正気か? 離れた場所にいる敵を同時に倒すなど、言う程簡単じゃないぞ。単体の敵を二人で同時攻撃するのとは訳が違う」
「簡単かどうかは問題ではない。やるしかないのだ」
「・・・作戦は?」
「同時展開するトルーパー二部隊との連携作戦となる。冥界にゴーストトルーパー、現世にドールトルーパーを展開し、常に情報を共有、処理しつつ、私はヘンゼルを叩く。アリスとムーンフェイスはそれぞれ情報処理のサポートに回れ」
『はい!』
『フン』
「赤ずきんはヘンゼルの攻撃に対する相殺だ」
「・・・【童話主人公の制約】まで利用するのか」
『懐かしいですねぇ』
「まぁ割と始めの頃に用いていたとは思うが・・それよりこちらのドールトルーパー共にも玩具を与えてやらんとな」
『オモチャですか?』
「あぁ。幸い、冥界用装備としての
「
「そんなところだ。死や呪いを伴う存在を討ち払う為のな。さて・・」
【
「神殺し自体はさして珍しいモノではないのか。そのせいか分からんが、使われた武器に統一性が無いな」
『
「つまり今ある武器で頑張れって事だな」
『どうするんです?』
「まぁやるだけやってみるとしよう」
そう言うと、パンドラは並び立つ二種のトルーパー達へと向き直ったその時――
ドォォォォォォン!!!
「「!?」」
突然の落雷による直撃を受けたパンドラ達は、粉々に砕け散るビルからほぼ同時に放り出された。
「くっ、作戦開始!」
『了解。ゴーストダイブ』
『ゴーストダイブ』
『ゴーストダイブ』
『ゴーストダイブ』
・
・
・
号令を受け、同じくビルから吹っ飛ばされていたゴーストトルーパー達が、次々と冥界へ次元移行し、パンドラ、赤ずきんの現世組はそれぞれ体勢を立て直しつつ、ドールトルーパー達と共に潜んでいたビルを飛び出す。
「クソっ、私がもう少し見張っていれば!」
「いや好都合だ。探す暇が省けた!」
苦い表情の赤ずきんに対して、尚も不敵な笑みを浮かべるパンドラは、両手の先に【
*
その頃、冥界へと飛んだゴーストトルーパー達は再び骸骨軍団を相手に再びゴーストジャックを仕掛けようとしていた。だが、
『おや?』
『どうしました?』
『・・ゴーストジャックが効かん』
『封じられたのか?』
『グレーテルの僅かな生体波導を骸骨共から感じる』
『先に自分の魂を分け入れておく事で、後から別の物が入れないようにしたって事ですかね?』
『早かったな。まぁ
ゴーストトルーパー達は、
そして
*
「さて、こちらも急がないと、向こうはもう倒すまでそう時間が無いぞ」
一方で、パンドラ達はゴーストトルーパー達の戦闘を指揮しながらも現世でヘンゼルトルーパーの群れを【
「そうは言っても数が多すぎる!」
『おまけにほぼ無限に近い形で生み出されているしな』
「やはり元を断たんとダメか」
そう言うと、パンドラは胸部中央に凝縮させた波導エネルギーからムーンライトカノンを放つと、ヘンゼルトルーパー達を薙ぎ払い、一気にヘンゼルとの距離を詰めた。
それに対しヘンゼルは、持っていた十字架の杖を掲げると、上空から白い衣に身を包んだ巨大な老人を召喚する。
「何だ奴は?」
するとその謎の老人が手を地上に向けてかざした途端、パンドラが両手の先に展開していた重力球が、一瞬にして掻き消された。
「!?」
即座に再生成するも、やはりものの数秒も経たない内に掻き消されてしまう。
「このクソジジイ・・」
悪態をつきながらも、パンドラは更なる追撃の為、インストールゲートからオルタナティブプリンシパルとマルチビットを召喚すると、即座に陣形を組ませた。
「
形成された巨大な光の刃が、勢いよく老人諸共ヘンゼルへと振り下ろされる。しかし・・
「!」
目に見えない障壁の様な物に阻まれたかと思うと、次の瞬間、マルチビット毎、光の刃が風に舞う粉の様に消失した。
「コイツ・・」
更に謎の老人が天を指差すと、すぐさま空が暗くなり、それと同時に蠢く様な轟音が鳴り響く。
「まさか・・・アクセレート!」
《
【
「!? グウゥッ!」
《
【
「馬鹿な・・どういう事だ?」
ゆっくりと起き上がりながら、パンドラは宙に浮かぶ謎の老人を見上げる。
『奴が聖属性の魔法を使うという事は・・神の類でも召喚したか?』
「私の嫌いなタイプだ」
『他の能力はどうです?』
「【
『そんな、どうすれば・・』
『時間でも遡るか? まぁ出来ればの話だが』
「それについては追々考えるとしよう。今は別の手段を講じる事にする」
『別の手段?』
「お前達に見せてやる。月の光が神をも惑わす様を」
そう言ってパンドラが空へ手をかざすと、上空にどこからともなくムーンアークがその姿を現した。
そしてムーンアークから眩い二筋の光の帯がパンドラの両手に収まったかと思うと、そこには山吹色に輝く二振りの剣が握られていたのである。
『えっ?!』
『コレは・・・』
「いい加減フィナーレといくぞ」
幾色もの連なる光を宿した剣を構えると、パンドラは展開したフォースウィングを羽ばたかせ、ヘンゼルと老人へ迫った。
それと同時に冥界でも、パンドラからの命令信号を受け取ったゴーストトルーパー達が一斉に上空へ飛翔し、パンドラから供給される波導エネルギーを全身に纏うと、次々とグレーテル目掛けて急降下していく。
そして現世では再び神と思われる老人が稲妻を走らせていた。
『このままじゃまた当てられちゃいます!』
「問題ない」
『えっ?』
「雷毎斬り倒す」
直後、上空より飛来した稲妻に対し、パンドラは弾丸の様に身体を捻りながら剣の刃先を当て、斬り裂いていく。
「!」
「ムーン・ガオ・ゼス・ブレイク」
二本の剣から斬撃が放たれ煌く十字へと変化すると、そこから更に巨大な狼の顔へと変貌し、突き抜けるような咆哮をあげヘンゼルごと、神を喰い尽くした。
『・・・・・・!?』
【
「対象の戦闘不能を確認。・・どうやら向こうも上手くいったようだな」
【
『パンドラさん、いつの間にあんな技を?』
「私が考えていたのは、月の力で新たな武器か能力を得る所までだ。アレはこの【ムーンダイト】がイメージで伝えてきたに過ぎん」
そう言ってパンドラはムーンアークへと戻っていくムーンダイトを見送る。
「ここでの目的は果たした。我々もムーンアークに戻ろう」
自身のもとへ帰投した全トルーパーを、魔法陣型のインストールゲートを通じて回収すると、パンドラは赤ずきんの方に目を配り、この【ヘンゼルとグレーテルの世界】を後にした。
《第十一章に続く》
蝶々仮面のパンドラ ギュラ ハヤト @GYURA-HAYATO
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。蝶々仮面のパンドラの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます