第3部
「今度は遅れずに済んだかな?」
「私も今来たところと言いたい所だが、邪魔だァ!」
ライトニングドレスへドレスチェンジしたパンドラは、前回同様、放電攻撃と雷の髪を操ってマルチビットを破壊しようと目論む。だが、
「何っ!?」
その放電も、雷の髪も、マルチビットに接触する瞬間に、見えない何かに弾かれ、その攻撃を阻まれた。
「クックックック、どうかね? この【避雷針システム】の感触は。ツクヨミ博士が私の戦闘データからその攻撃の対策を施さないとでも思ったか?」
「チッ、ドレスチェンジ!」
既にライトニングドレスによる攻撃がムーンフェイスに通用しない事を悟ったパンドラは、再びフレイムドレスへと変身する。
再び襲い来るマルチビットの光線を【
「ヌオォッ!? この揺れはっ・・・・・・アイツか!」
振り返れば、戦線復帰していたオニ桃太郎が地面を踏み鳴らし、地震を引き起こしていたのである。
「くっ!」
すぐさまフォースウィングで空中へ逃れるパンドラだったが、そこへ、同じくメインブースターを吹かし空中へ逃れていたムーンフェイスによる粒子ビームが襲った。
しかし今やパンドラが粒子ビーム一つ避けられない筈が無く、【
メインブースターを破壊されたムーンフェイスは、地面へ不時着するや否や、続いていたオニ桃太郎の地震攻撃に巻き込まれ、バランスを崩した。
『しめた。奴が倒れ込んだ!』
「このままマルチビットから破壊する」
パンドラは再度焔の髪を操り、マルチビットの破壊にかかる。
だがまたしてもそこへ、オニ桃太郎が方向攻撃をパンドラへ浴びせかけた。
間一髪、その寸前に【
「! (しめた。コイツ等は手を組んでいるわけではない。コイツ等同士を上手く敵対させれば、両方を消耗させられるかもしれんな)」
ところが、パンドラがそう考えたのもつかの間、ムーンフェイスは失ったマルチビット四機を、どこからとも無く補充してみせたのである。
「何だと!?」
何も無い空間に突然、新たに現れたそのマルチビット達に、パンドラは驚愕した。
「んん? あぁそうか、コレを見るのも初めてだったか。どうかね? 我が【
「余計な機能ばかり付けおって・・・・・・」
毒づくパンドラに、ムーンフェイスはナノマシンの力で、破壊されたメインブースターの再生を始めながら、全身のサブスラスターを吹かして接近する。
更にそこから両足の先よりビームサーベルを展開し、パンドラに斬りかかった。
「フン」
【
「サイボーグの癖に、学習能力の無い奴め!」
「それはどうかな?」
「!」
【
「「!?」」
見覚えのある黒い球体が、掌から流星弾を放とうとしていたムーンフェイスの左前腕を飲み込む。
「チイッ!」
アリスの乱入に気付いたムーンフェイスは、マルチビットを操り、アリスに光線の雨を浴びせた。
だが、それに対しパンドラは、アリスをスペードブレイダー形態に変化させつつ手元に引き寄せると、それを振るい、降り注ぐ光線を全て弾いていく。
「何故こっちへ来た? 奴等の処理はどうした?」
『・・・・・・すみません。約束を守れなくて攻撃を通してしまいました。今は重力波導で地面に押さえつけています』
アリスは悔しさをにじませながら、兵達の現状を報告した。
「ホウ、そうか。では後でじっくり手にかけるとしよう」
パンドラは不敵な笑みを浮かべてそう言うと、再び乱入してきたオニ桃太郎に対し、アリスを人間形態に戻す。
「奴の攻撃を妨害しろ」
「は、ハイ!」
パンドラの命を受けたアリスがオニ桃太郎と対峙する中、そのアリスの重力球で左前腕を破壊されたムーンフェイスは、その再生を始めると同時に右腕のアクティブアームを射出し、それとマルチビットを駆使して更にパンドラを追い立てた。
しかし、同士討ちの考えを諦めていなかったパンドラは、その攻撃をかわしながら、アリスが相手をするオニ桃太郎の方へと誘導していき、纏わりつくように動く事で、オニ桃太郎をムーンフェイスからの盾とする。
「ええい、小癪な。邪魔だ!」
オニ桃太郎の巨体のせいでパンドラを補足出来ないムーンフェイスは、射出中だった右腕のアクティブアームをオニ桃太郎の両足に巻きつかせ、そこからすくい上げるようにしてオニ桃太郎を転倒させた。
「! (今だッ)」
コレを最大の好機とみたパンドラは、右脚に波導エネルギーをチャージさせると、フォースウィングで飛翔し、キック体勢に入る。
だが、同じくコレを最大の好機とみていたムーンフェイスは、十機のマルチビットを五機ずつ組み合わせ、二箇所から大出力の光線をパンドラに浴びせた。
「! ・・・・・・チッ」
それに気づいたパンドラは、【
それと同時に、アリスもまた重力球でマルチビットのもう片方のグループを全て覆い、消滅させた。
「このっ、とことんイラつかせてくれるな、君等は!」
「お褒めに預かり光栄だ!」
そこへ転倒していたオニ桃太郎が立ち上がって戦闘復帰し、地割れ攻撃を放ってパンドラとムーンフェイス双方へ同時攻撃する。
「くっ!」
「ええいッ!」
パンドラはフォースウィングを羽ばたかせて再び飛翔し、ムーンフェイスもまた再生を終えたメインブースターを吹かし空中に逃れた。
しかし、オニ桃太郎による地割れ攻撃の範囲は想像以上に広く、アリスの重力魔法によって捕縛されていた兵達にまでその魔の手が伸びようとしていたのである。
「いけないっ!」
自身も反重力魔法で浮遊していたアリスは、反重力波で自分を弾くと、裂き進む地割れ攻撃を追って兵達の元へと飛んだ。
「お願い、間に合って・・・・・・」
地割れ攻撃との距離を詰め、兵達が目前に迫ると、アリスは兵達にかけていた重力魔法の捕縛を解除する。
だが、それでも一歩遅く、兵達は広がる地面の裂け目に飲み込まれてしまった。
「ああっ!」
アリスは地表付近まで高度を下げると、そこから反重力魔法で転落した兵達を引っ張り上げる。
「させませんよ・・・・・・こんな事ォ!」
アリスの決死の抵抗により、すんでの所で飲み込まれた全員を無事に引き上げたアリスは、そのまま反重力波導で兵達を地割れの範囲外まで押し出した。
「お願いします。もう戻ってこないで・・・・・・」
祈る様に呟くアリスをよそに、パンドラとムーンフェイスは空中で睨み合う。
「・・・・・・(左腕の再生完了。
ムーンフェイスが自身のマシンコンディションを確認する一方で、パンドラはアリスをブローチに回収しつつ、ムーンフェイスとオニ桃太郎を同時攻略する術を考えていた。
「・・・・・・(さて、今回の奴は少々厄介だ。どう攻め落としたものか。マルチビットは破壊して戦力を落としても一時的なもので、即座に補充する。という事は本体を直接叩くしかあるまい。だが、アイツの妨害がある中では中々現実的とは言えんな。アリスに足止めさせてその間に破壊するにしても、部分的な破壊ではナノマシンによる再生を許してしまう。可能性があるとすれば・・・・・・)」
パンドラはフォースウィングを羽ばたかせると、オニ桃太郎へ向けて急降下し、攻撃をかいくぐるとその懐への侵入を果たす。
「ガァァァァァッ!」
そしてオニ桃太郎が咆哮攻撃を放とうとしたまさにそのタイミングに合わせて、両手に生成していた焔属性のフォースボールを、オニ桃太郎の大きく開いた口の中で一つにした。
「グアァァァァァァッ!」
「身体は頑丈に鍛えられても目や口の中まで堅牢には出来まいっ!」
だが、パンドラがオニ桃太郎の下へ急降下するのと同時に、補充したマルチビットを展開していたムーンフェイスは、今こそ好機と、マルチビットで直接パンドラに刺突攻撃を繰り出す。
『危ないっ!』
十機のマルチビット全てが、パンドラの身体中にハリネズミの如く突き刺さろうとした瞬間、ブローチからアリスが飛び出すと、十機のマルチビット群に対し同時に反重力波を浴びせ、弾き返す事でパンドラへの刺突を阻止した。
しかし、マルチビットの攻撃がそれだけで終わる筈も無く、その直後、マルチビット群は一斉に先端のクリスタル部分から光線を放つ。
それでもアリスは決して怯む事無く、発射した瞬間のマルチビット群を、光線ごと重力球でその闇に引きずり潰した。
「アァァァァァァウッ!」
オニ桃太郎もパンドラによる灼熱の攻撃から逃れるべく、鋭い爪を伴った豪腕で殴りかかる。
『くっ!』
何としてもパンドラを守り抜くべく、アリスは両サイドからパンドラに迫る腕に、反重力波を展開し、童話主人公の制約を利用してオニ桃太郎のパワーを相殺した。
ところがそこへ、ムーンフェイスが新たに補充したマルチビット群で力場を発生させ、そこにチャージし終えた粒子ビームを通すと、その規模を数倍に膨れ上がらせて超大規模な粒子ビームがパンドラへと迫る。
「(きた!)」
この瞬間を待っていたとばかりに(規模は想定外だったが)パンドラは焔属性の大型フォースボールの攻撃を止めると、即座にアリスをブローチに戻し【
そしてそのまま、超大規模粒子ビームがオニ桃太郎をその光の中に飲み込むと、緩やかにその幅を細め、完全に消えたその場所に、紋章形態となった桃太郎を残したのである。
《桃太郎編――第4部へ続く――》
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