第6部
『これでやっと配下を全員倒しましたね』
「あぁ。これで残すは奴一人だ」
『これだけ派手に暴れて出てこないという事は、知ってて根城で待ち構えてるんだろうな』
「合金城か・・・・・・」
パンドラは遥か前方にそびえ立つ白金の城を睨め上げた。
『このまま行きますか? それとも、少し休みますか?』
「当然、このまま行く」
『了解です!』
アリスがそう応えると、パンドラはフレイムバスターカノンをブローチにしまい、いよいよ以って決戦の地、合金城へと向けてフォースウィングを羽ばたかせる。
「これは・・・・・・」
合金城の上空に差し掛かったパンドラが眼下を見下ろすと、その敷地内にはあの鎧武者の大群が準備万端といわんばかりに整列待機していた。
『鎧武者!』
『忌々しい・・・・・・』
「先手必勝だ。殲滅する」
そう言うとパンドラは胸部中央に波導エネルギーをチャージし、上空から鎧武者の列に向けて焔属性のフォースカノンを放つ。
パンドラの襲撃に、残りの鎧武者達もバズーカ砲やミサイルランチャーを構えトリガーを引いた。
地上から浴びせられる砲弾の弾幕に対し、パンドラはアリスをクラヴィティハンマー形態で起動し、周囲全体に反重力波導を放つと、それらを全て発射した地上の鎧武者達へと跳ね返す。
続いて襲い来るミサイルを、クラヴィティハンマーをしまったパンドラは、フォースウィングを羽ばたかせて逆に降下し、回避した。だが、
『パンドラさん後ろから敵の攻撃が!』
「何!?」
かわした筈のミサイルがUターンし、パンドラの下へと戻ってきたのである。
再びミサイルの軌道から外れるパンドラだが、ミサイルはまたも急旋回で軌道変更し、パンドラへと向かってきた。
「追尾能力があるのか!?」
どこまでも迫ってくるミサイル群から逃れるため、パンドラはフォースウィングの機動力と運動性能を如何なく発揮し、
『オイ、私を出せ』
「ン?」
赤ずきんからの突然の申し出に、考えが分からないながらもパンドラは赤ずきんを魔宝具形態で起動した。
『クリムゾンシューティング!』
銀色の砲口から放たれる紅色の粒子ビームに加え、銃本体の左右から展開されたサイドユニットから、無数の紅いホーミングレーザーが我先にと、迫り来るミサイル群に飛び込んでいく。
『凄い・・・・・・!』
ミサイルを全弾叩き落し、辺り一帯の空域を爆炎で覆うさまに、アリスは開いた口が塞がらない。
「君も人が悪い。ここまでの物、最初に起動した時に言ってくれればいいものを」
『それ程の事態ではないと判断したから言わなかったまでだ』
「だが、奴等の火の粉を払い除けたに過ぎん。第二波が来る前に片をつけるぞ」
『あぁ』
「クリムゾンシューティング!」
既に地上で第二波攻撃の構えに入っていた鎧武者軍団に銃口を向けると、パンドラはフレイムバスターカノンから再び必殺の一撃を放った。
『私を出せ。奴の攻撃を相殺する』
「出来るのか?」
『やるしかないだろう。それとも奴が止まってくれるのを待つか?』
「分かった、任せる」
召喚された赤ずきんは、即座に両腰のホルスターから拳銃を抜くと、金太郎を狙う素振りなど微塵も見せず、四方八方に向かって乱れ撃ちを放ち、焔の壁で自分達を円状に覆い続ける事で金太郎の接近を防いでみせた。
「! ・・・・・・」
これを受けた金太郎は、肉弾戦による攻撃を諦めて距離を取ると、雷属性の魔法を駆使し、パンドラ達の上空から攻撃を仕掛ける。
「上だ!」
「!」
だが一足早くそれに気付いたパンドラの声に、赤ずきんはすぐさま反応する事でこれを相殺した。
「・・・・・・・・・・・・」
赤ずきんの対応に金太郎は特に動揺する事も無く、逆に彼が打った次の手によって、パンドラ達は動揺させられる事になる。
「なッ!」
次の瞬間、金太郎は合金城の内壁から、パンドラが一度倒した筈のメタルグリズリー、メタルスコーピオン、メタルメデューサ、メタルジンの四体を彼女達の目の前で生み出してみせた。
「バカな、奴等は全て倒した筈・・・・・・」
表情を険しくするパンドラに対し、金太郎は無言のまま不敵な笑みを浮かべる。
「ならアレは全て私が倒す。奴は自分でどうにかしろ」
「引き受けた」
かくして金属生命体達と赤ずきんの四対一の戦いが始まる一方で、パンドラ対金太郎の第二ラウンドの火蓋が切って落とされた。
赤ずきんの妨害が無くなったパンドラに、金太郎は再び雷魔法による高速移動で近接戦闘を仕掛ける。
しかしパンドラに関しては先と全く同じ徹を踏まず、フォースバリアを球体状に展開し、金太郎の攻撃を断続的に凌いでいた。
「ぐっ!」
だがそれでも金太郎のパワーは凄まじく、展開されているフォースバリア毎、パンドラを突き飛ばし続ける。
「グォアッ!」
身体全体を揺らされる感覚に襲われるパンドラだが、彼女にはもう一つ問題があった。
「くっ!」
攻勢に転じるため、焔属性のフォースボールを放つも、これが金太郎にかすりもしないのである。
「奴が早すぎて攻撃が当たらん!」
中々攻撃が当たらない事に苛立ちが募り始めたパンドラは、攻撃を放つ一瞬だけ、球体状に展開していたフォースバリアを解いていたのを、次第に防御を捨て、両手にフォースボールを生成した攻撃重視にシフトしていく。だが、
「グアァァッ!」
当然、金太郎の姿を捕える術も無いままカウンターをくらわせようと考えたパンドラは、彼の攻撃をまともに浴びる事になった。
「!」
パンドラの叫び声に、金属生命体四体を弾幕で圧倒していた赤ずきんは思わず視線を向ける。
「この馬鹿ッ、奴の動きなど眼で追うなぁ!」
「ッ!」
赤ずきんの怒声に、パンドラは自分が間抜けな事をしている事に気が付いた。
実際にはちゃんと生態波導感知能力で金太郎の気配を追っていたのだが、あまりの金太郎の速度に、目と反応速度で対応するようになり、次第に感知能力が薄れていたのである。
そこでパンドラは今一度球体状にフォースバリアを展開して自身を防護すると、感知能力を研ぎ澄ます事に神経を集中させた。
「(奴の気配を辿る事に集中しろ・・・・・・辿って、辿ってその先を往く!)」
その時――
「ハッ!」
突然、パンドラの頭の中に一つの光景が流れ込んでくる。
そこでは金太郎が自身の左側から迫り、稲妻を纏った拳でフォースバリアを殴りつけ、自分がそれ毎突き飛ばされていた。
そしてパンドラは再び現実へと引き戻される。
「今のは・・・・・・!」
初めての現象に戸惑うものの、その直後に左側から急速に迫る生体反応を感じ取ると同時に、パンドラはそれ以上考えるのを止め、バックステップで後方へ回避した。
「!?」
直撃する寸前、突然自身の視界から消えたパンドラに、金太郎は考える間もなく、そのまま向かいの壁に激突する。
これには流石の金太郎も動揺を露にした。
それまで常に直撃していた自分の攻撃が突然避けられたのだから、至極当然である。
同時に、パンドラも自身に起きた現象の正体を探っていた。
「(今、あの光景の通りに奴が左側から攻撃を仕掛けてきた。あれは・・・・・・っ!)」
直後、パンドラの頭の中に再び金太郎が、激突した壁から攻撃を繰り出しながら迫ってくる光景が流れ込む。
そしてそれに応じて展開していたフォースバリアを解除すると同時に、フォースウィングを展開し左側へ羽ばたいた。
すると次の瞬間、それまでパンドラのいた地点に一瞬で到達した金太郎は、パンドラが回避時に羽ばたいたフォースウィングの余剰エネルギーをまともに浴び、回避したパンドラと正反対の方向へ吹っ飛ばされ、壁に背中から叩きつけられたのである。
「これはまさか・・・・・・」
謎の現象の正体に迫るパンドラに、今度は雷属性魔法で落雷攻撃を繰り出す金太郎の光景が飛び込むと、パンドラはフォースウィングの運動性を最大限に発揮し、連続する雷の落雷をことごとく避け続けた。
「生態波導の感知とそれに対する反応速度を極限まで高めた先の・・・・・・」
続けて姿を消した金太郎がパンドラの背後から雷で作ったハルバードを突き刺しにかかる光景が流れ込み、パンドラは確信する。
「近未来予知だ!」
【
《金太郎編――第7部に続く――》
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