第3話


「えっ?」


ボソッと口から声にならない声が漏れると私はそのまま足から崩れ落ちた。

人は本当に驚くと声は出ないらしい、それどころかはっきりと認識できない状況や、目の前にいるはずのない人間の存在で全身から力が抜けていく。


今までは、ただ受け入れられない状況に混乱していた為、まだ立てていたが、受け入れらない状況を頭が整理し始めてしまったがために、体がついていけなくなる。


「おいおい、大丈夫かよ」


彼が、上から私を覗き込む。


「安心しろ、別にお前に何かするつもりはこれっぽっちも無いから。ただお前があのまま頭打って死んだ日には、俺みたいにここの住人になっちまうからな。ここは俺一人で定員オーバーなんだよ。だからここで死なれたら困るんだ」


「ってことは、やっぱり池田昂さんなんだ」


「そんな真っ青になるなって、って、そりゃ無理な相談か、すぐ戻してやるから安心しな。久しぶりに人と話せて楽しかったよ」


あっ、何となく今、彼の言葉に寂しさを感じた。



ふと再び窓へと目線を移すと窓の横に男の子がしゃがんでるのが見えた。

体育座りでうつむいているため、表情ははっきりわからない。


「それじゃ戻すから今度はこけるなよ」


「ちょっと待って」


「あっ?」


おそらく私を戻そうとしたのか、腰が抜けてへたり込んでいる私の上に手をかざそうとしていた昂を静止する


「あそこに男の子がうずくまってるけど大丈夫かな?あんなに小さいし具合悪いんじゃ」


どう見ても小学校低学年以下にしか見えない。そんな子が1人でいるなんて大丈夫だろうか。


「ねぇ、君…」


「バカ、話しかけるな」


男の子に話しを聞こうとする私を昂が慌てて止める。


「何よ、あんな小さな子をほっとくの?」


「そういう問題じゃないんだよ。お前、ここの奴に関わるってことがどういう事か分かってないだろう。青ざめてたんじゃなかったのかよ」


「お姉さん。僕のこと呼んだ?」


昂の静止は間に合っていなかったようで、男の子を顔を上げるときらきらと嬉しそうな顔を向けた。

真ん丸で大きな目に少し耳の下まで伸びた髪型で、白いTシャツとベージュの短パンを身に着けていた。


「あー、くそっ」


隣で昂が呟くのが聞こえた。

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