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 あくる日、母さんが配達で出払っている間彩可と二人で店番をしてると、一人の少女が我が国宮布団店を訪れてきた。


「これ、修繕して頂くことは可能でしょうか?」


 キュンと脳に抜ける、フルートを響かせたような声。少女性を残しながらも気丈で凛としている感じ。赤い冬用コートを纏って、髪はツインテールの形に両サイドでまとめていた。リボンの色は藍色。


 少女が持ち込んできたのは、高校の制服である。布団関係の他に、修繕全般請負ますよと、店の看板に書いてあるしな。


「はい。できますよ~。少し、お時間頂けますか?」


 実際、業務用ミシンを使う本格的な布団の打ち直しとかはまだ無理だが、針と糸での簡易な修繕全般は彩可でもできた。


双桜そうおう高校だ」

「あ、はい。四月から、通うことになります」


 彩可は制服のほつれた箇所を修繕しながら、器用に雑談も進めていく。


「お古だね」

「はい、お金なくて。あ、いや。知り合いに卒業生がいたんで。サイズもぴったりだったし」

「イイね。その知り合いの人は、縁ある人なんだね」

「ええ。まあ。女子高時代の人ですが」


 双桜高校は、長年女子高だったのだが、近年のS市の改革で共学になった高校である。付け加えると、学力的には彩可が通っていた市のトップの女子高よりも、二ランク下くらい。


「でも、どうでしょう。どんどん新しい制服が売れないと、経済が回っていきません」

「それはそうだけど。そのままなら忘れ去られたり、捨て去られたりしてしまうものを、何らかの工夫をほどこしながら存続させていくっていう力も、大事なんじゃないかな」


 その時、またチェーンが光り始めた。今度は琴美の時の色と似ているけれど、それよりも濃く、強い感じの蒼色だった。これで、六色。


 瞬間。少女の顔色が変わった。朗らかな態度で修繕を続ける彩可から視線を外し、キっと後ろでボンヤリと待機していた俺を睨みつける。


(なんだ?)


 結局、少女は制服の修繕が終わるまでの小一時間、彩可との何気ない会話を交わす以外は、ずっと俺のことを注視していた。


「はい。縫合ほうごう完了」

「ありがとうございます」


 丁寧に礼をして制服を受け取り、告げられた代金を支払うと、少女は店の出口まで移動し、そしてくるりと俺の方を向き直った。


「そちらの、お兄様、でしょうか。少し、私に付き合って頂けないでしょうか?」

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