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 相変わらず、彩可はフリーダムに様々なものを作ってる。現在は、受験を終えた春休み、という余裕がある時期ということもあるだろうか。連日、夜は没入して何やら作業している。


「どっちがイイと思う?」


 二つの、ちょうど手首が入るくらいの「輪」の形状の装飾について見解を求められる。


 彼女が現在作ってるのは、商店街で行われるイベントで「橋姫」様役の子が着る衣装である。それほど正式なものではなく、いわばコスプレ衣装だ。父さんと欧州に行っていた頃、フランスのドンレミ村近辺でお祭りに遭遇する機会があったのだが、そこではジャンヌ・ダルク役の女性はそれこそイメージとしての聖女のコスプレをしているがごとしだった。ソレの、我が国のローカルイベント版だ。


「こっちかな」


 小さな球体が連鎖して輪になってる方を指した。こっちの方が和風で、「姫」というコンセプトにはあってる気がしたからだ。


「じゃ、こっちにしよう」

「趣旨に合わせるならな。俺個人としてはこっちも好きだけど」


 もう片方は、いかなる材質なのか、透明な楕円形の何かが連なり、チェーンのようになっていた。カッコイイけど、和風の美とはちょっと違う感じ。


「もう片方はどうするんだ?」

「うーん。ボツ作品だからね。何かに使うことがあればイイけど、なければ捨てちゃうかな」

「じゃ、くれ」

「いいけど? でもちょっと男の人がつける感じではないよ?」

「イイんだ。なんかピンときただけだから」


 この、輪が交互に連なってる感じとか、七夕飾りみたいで縁起がイイ気もする。受け取ったボツになったチェーンの方を、二人の部屋を隔てているカーテンを開けて自分のベッドの上に置く。


 実は、何となく彩可の「気」のようなものがこもった物から、モチベーションを分けて貰えたらという気持ちもあった。俺の妹、制作に熱中してる時はエネルギッシュだからな。


「俺、最近、今一つやる気が出ないんだよ」

「また唐突だね」

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