エロい触手


 ダンジョンの最深部を目指すミツバは、あっさりとエロいスライムを撃退した。

 魔剣士×黒魔導師専用のレアスキルを使ったのだ。特定のモンスターに対してのみ有効なスキルで、エロいスライムにはよく効くのである。

 そのため、服は溶かされていない。チッ……!

 この階層で要注意とされるのは、冒険者にからみつき、妙な白濁粘液をぶっかけるヌメヌメした触手(通称「エロい触手」)である。

 たいていの場合、狙われるのは女性か男の娘だ。やはり、クールな女騎士だと、より一層狙われやすい。

 攻撃関係はヘナチョコでヘッポコなヘナポコなので、エロい触手に負ける冒険者はまずいない。「くっ、殺せ!」と言っても無駄である。エロい触手に白濁粘液まみれにされた女騎士はいくらでもいるが、殺された女騎士なんて聞いた事がない。

 しかし、エロい触手が厄介なのは、異様に高い守りと体力を有している事。

 そのため、エロい触手に捕まった冒険者の大半は、エロい触手が満足するまで白濁粘液をぶっかけられるしかない。

 さらには、白濁粘液には催淫作用があり、えっちな気分になっちゃって戦いどころじゃなくなってしまう。エロいスライムよりも倒すのが難しい相手だった。

 ほとんどのモンスターには催淫効果が発揮されないので、エロい触手の白濁粘液に催淫作用がある理由は不明である。学者が口を揃えて言うには「白濁粘液まみれの美少女ってエロいよね」だそうだが。

 真面目な研究者は、エロい触手の白濁粘液が持つ催淫作用に注目し、媚薬(塗るタイプ)を開発中である。研究が進めば、飲む媚薬も作れるようになるそうだ。

 そんなこんなで。

 ミツバがエロい触手と遭遇した。

「これがエロい触手か~」

 エロい触手は、巨大なイソギンチャクのような見た目のモンスターだった。太くて長い触手(ヌメヌメしている)の束が、うねうねと動いている。

 エロい触手の魔の手が、ミツバに接近。美少女なだけはあって、エロい触手に興味を持たれたようだ。

「当たらないよ!」

 高い回避力により、触手を躱したミツバ。すかさず白濁粘液を発射しようとするエロい触手だったが、渾身の白濁粘液放出も空振りに終わる。

「スキあり!」

 白濁粘液を出した直後、短い時間ではあるが、エロい触手は反動で硬直状態になるのだ。だが、守りに優れるエロい触手には、そのようなスキなど関係ない──はずだった。

 相手が、魔剣士×黒魔導師でなければ。

「スレイヤーのスキルを発動するよ!」

 スレイヤー。

 それが、例のレアスキルである。特定のモンスターに対してのみ有効なスキルで、エロい触手にもよく効くのだ。

「斬っ!」

 不可思議なオーラを帯びた剣で、エロい触手に斬りかかる。何本かの触手が吹き飛び、地面に落ちて消滅した。

 硬直が解けたエロい触手が、再びミツバを捕らえようとする。それに対し、ミツバが迎撃。自分に向かってきた触手を斬り落としてみせた。

「終わりにしちゃうね!」

 一気に肉迫したミツバは、エロい触手に刃を振り下ろす。

 斬り裂かれたエロい触手が、光の粒子と化して消えていった。後に残ったのは、エロい触手のコアのみ。

 エロい触手をもってしても、ミツバをエロい目に遭わせる事は叶わなかったのである……。

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