唯一の世界/唯一の規則/唯一の人間

冷泉 小鳥

非実在高校の屋上にて

 僕はいつも、学校の屋上、というスペースに対して憧れを抱いていた。僕が在学していた学校では、常に屋上への道は鍵によって阻まれていた。屋上はいつも、僕の手の届かない場所に存在した。だからだろうか?僕は屋上、と聞く度に、そこに何か神秘的な意味を読み取ってしまう。それはちょうど、死後の世界に対して人々が抱く神秘的なイメージに似ている。神秘はいつも、僕の手の内に収まったかと思えば消え去ってしまう。僕は複雑な数式に対して神秘性を感じることもあるが、「1+1=2」にいささかも神秘的な成分が含まれていないことは、よく知っている。


 僕は今、高校の屋上に立っている。分かっている、これが僕の夢だ、ということは。僕が見ている風景には、ただ高校の屋上のみが切り出されていて、それ以外の景色は無気力な白色に覆われている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

唯一の世界/唯一の規則/唯一の人間 冷泉 小鳥 @reisenkotori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ