第13話 寝よう、か
どうしてこんなことになってしまったのだろうか……
村人が他の村人と森林の資源をどっちが使うかでもめているらしい。それを俺が解決しろと頼んできた。だから、俺にできるわけないだろう。もともとは高校生だぞ。俺にそんな立派な策を立てられると思っているのか。
高校生程度にできることなんてそれはもう決まっている。何でこんなことになってしまったんだ。俺は混乱に混乱を重ねて同じようなことを考えては別のことを考えてとしていたが結局のところ考えていることはまるで山手線のようにぐるぐるとまわっているだけだった。
「はぁ」
とりあえずこの日は俺の住むべき家に案内された。詳しい策は明日にでも聞きたいと言ってきた。
明日までに思いつくことが果たしてできるのだろうか。明日ができれば来ないでほしい。こんな気持ちになるのはテストの前の日ぐらいだと思っていたが、テストがないこの戦国時代でも嫌な気持ちにはさせられるんだな。
「はぁ~」
ため息が止まらない。
ついでに言うと、緊張なのか心臓が痛い。このまま心臓発作で倒れてしまうかも。いや、過呼吸かもしれない。
心臓がバクバクしている。
理由は簡単。
策を立てないといけないことに不安を感じているから。
そう、それだけだったらたぶんそんなに心臓がバクバクしていることはなかっただろう。たぶんどうにかなる。俺としてはそうやって今まで生きてきた。だから、その話はどうにかなるさ。ははは。
さあ、じゃあどうして俺の心臓がこんなにバクバクしているって。それは……
「で、何できくがいここにいるんだい?」
俺の横には村長の娘であるきくがいた。俺が商人に会う前に偶然出会いそして、胸を揉んでしまった女子だ。そんな彼女がどうしてここにいるのか。
その理由は簡単なことにここが村長の家だからだ。ただ、村長の家だったらきくがいるというのもわかる。でも、問題なのはきくが同じ部屋のしかも横に並ぶかのように寝ようとしていることが問題なのだ。部屋はちなみにほぼ1つと言っても過言でないので同じ部屋にいるのは仕方ないと思う。
「それはとと様にここで寝るように言われたからです」
「親として娘に男と一緒に寝かせるのはどうかと思うけど……」
とと様と呼ばれた村長はすでにこの部屋の奥の方で大きないびきをかきながら寝ている。
しかし、この時代だとそういった行為は普通であるのだろうか。きくは、俺と一緒に寝て果たしていいのか。そこに本人の意思というものはあるのか。俺はそんなことを思ってしまった。やはり現代民主的個人が尊重される時代から来た人間としてそこが引っかかってしまう。
きくに聞いてみることにしてみる。
「きくは、俺と一緒に寝ていいのか?」
「何でためらう必要性があるのですか?」
きくは俺の質問に対して不思議そうに答える。顔の表情からはてなマークが出ているかのように思えた。本当にきくは何とも思っていないようだ。いや、俺と一緒に寝ることについて何も不思議ではないみたいだ。どうしてだろうか。やはりここが戦国の世であるから親として子孫を何としても残してもらいたいという気持ちがあるから娘も自然とそんな風に教育をされるのか。だったら、この時代の女子ってめっちゃエロいのか。
……まあ、そんなエロゲとかAⅤのような展開はないと思うが、まあ俺もねえ男だしいろいろと思うことがあるんですよ。って、誰に言い訳をしているんだか。
それに寝るの意味をさっきから俺はあっちの意味にしかとらえていないが、純粋に寝るだけなのかもしれない。うん。そうだ。そうに違いない。俺がただエロくて童貞でそういった行為にあこがれるうえで妄想しているだけなのだ。そうに違いない。
「じゃあ、私は寝ます。もしも不便なことがあったら勝手に起こしてくれもいいですよ」
きくは、無表情で俺にそう言った。
そして、そのまま寝てしまった。かわいらしく小さないびきをかいている。寝顔を少し見てみる。やはりかわいいと思う。
しかし、寝顔を見て俺は思ったのだが、きくは基本的に無愛想であった。無表情であった。本音はこんな得体の知れない男と一緒に寝たくないのかもしれない。素直に感情に出してくれればいいのに。そうしてくれれば俺もどう対応すればいいのかわかるのにな。ただ、寝ているときの表情は幸せそうだった。俺のことを忘れたから幸せだったのかな。
まあ、俺は初めて会った時から迷惑をかけてしまっている。好意を持たれるはずなんか絶対にない。むしろ嫌われて当然だ。よく、表情に出していないと思う。そこはすごいなあ。
だからこそ、俺はなるべくきくの迷惑にならないようにすることを決めた。
きくが俺のすぐそばで寝ていたのだが、俺は邪魔にならないようにきくから一定の距離を取って寝ることにする。この時代にはふとんというあの人間をダメにする魔性の道具がないのか雑魚寝という腰やら背中やらに負担がくる寝方しかないが文句を言っていられない。
これが、戦国時代。しいて言うと、農村だ。武士のように豊かでないからしっかりとしたものを羽織ることもできないし仕方ない。
そして、俺は寝ることにした。
季節がまだ冬に入っていなくてよかった。
春の終わりだからこれからは暑くなるだろうけど、これが冬だったら一体どうすればいいのだと今からも不安を感じているのであった。
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