第12話 頼むから
男にずっと土下座をされていたのだが、ようやくと言っていいのか頑張って男にもう土下座をしなくていいですよと説得をしたおかげで土下座をやめてもらえた。
必死に土下座をする姿っていうのを見るのは本当につらかった。っていうか、もっと人の話を聞いてもらいたかったんだよな。どうにかしてくれよ。もう。
「では、話を再開します」
村長が言う。男はしゅんと静かになりすぐさま元いた席に座る。
誤解が分かっただけましだが、俺のことではなくこの男の心配をすると反村長派であろうから今後の立ち位置が危ういということだけはわかる。まあ、俺にとっては大人の派閥争いなど関係ないことだからどうでもいいんだが。
村長の話は俺のことについてだった。
俺が神様だということは未だに続いている。否定をしたいのだがこの様子だと否定をすることができそうにない。もう否定をすることができないし、見たいから来たと言ってもどうにもならないしいっそこのまま通してしまおうかともうあきらめて考えてしまった。
すみません、お母さん。俺は嘘をつくような人間に成ってしまいました……はるか遠く未来に残っているお母さんに向かって謝る。まあ、別にこれが人生初の嘘ではないのだが、嘘の大きさが違うから謝った。だって、現代において神様とか自分から名乗るやつとか痛い奴じゃん。俺はそんなウソをついたことはない。せいぜい、宿題をさぼったとかテストで悪い点を取ったからテスト自体がなかったとかその程度の嘘をついたぐらいだ。ちなみにテストのことは後日ばれた。英語のテストをもっといい場所に隠しておかなくてはいけなかったな。
そんな昔のどうでもいいことを思い出している最中も村人たちは会議を続けていた。
村人たちの話の内容はまず俺のことだった。
神様であるという前提で進んでいるので立派なお社を作ってあげようとか言っていた。でも、それまではこの村の既存のどれかの建物に住んでもらわないと困るからどうするかと話していた。
俺としては衣食住がしっかりととれるのであればいい。家もそんなに立派でなくていい。何せ元板世界の俺の家は一戸建てではなくアパートであったからだ。俺の部屋なんてなかった。クラスの友達はしっかりとした一戸建てに住んでいて自分の部屋とかあってとてもうらやましかった記憶が今もある。小学生の頃のことだ。
まあ、高校生となった今ではそんなのはどうでもいいと思っている。まあ、1人でもんもんとしたときに家族に見られるからできないというのが残念であるが……って、またどうでもいいようなことを考えてしまった。
村人の話はほかにもあった。
それは隣村との争いだった。どうやら近くの森林について隣村の連中が勝手に資源を奪っていくみたいだ。勝手に木を伐採して木炭や薪にしてしまうらしい。しかも、隣村の連中は軽武装をしているそうだ。こっちは武装するような武器がなくて太刀打ちがいかないらしい。それに関して村人はかなり困っているようだ。相手が武器を持っていると考えるとかなりきついかもしれない。最悪殺し合いに発展するかもしれない。だから、村人は困っているのだろう。
俺はその話を聞いてそういえば昔の大河ドラマでそんな感じの話があったような気がしたなあと思った。しかし、俺はその大河の主人公のように頭がよくないし策を立てることができないのでやっぱり俺には無理だと思った。
助けてと言われても俺は無理だぞ。
しかし、俺のそんな祈りは効かなかった。
村人は俺に助けを求めてきた。
「神様、どうか、どうかお助けください」
村長にそう言われてうっとくる。
村長に続けていい年した男どもが俺に土下座をしてくる。
「はぁー」
まったくどうすればいいんだよ。俺の苦労は終わりそうになかった。何も俺に柵なんかたてられないんだぞ。もう。
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