「そうじゃないのっ! もう。どうしてわからないかなぁ」

「そうやって、モケモフさんが他の人のお仕事を取っちゃったら、その人はどうなるの? 別のお仕事を探さなきゃいけなくなるでしょ。でも、それが見つかるまでは、どうするの。見つからなかったら? いままで、その人といっしょに仕事をしていたんでしょ。そのつきあいが、なくなっちゃうでしょ」

 唇を尖らせて言ったミャイは、次にこちらを向いて目を吊り上げた。

「モケモフさんも。そうやって仕事を請け負って、いまよりもずっといっぱい、働くことになるでしょう。そうしたら、体は大丈夫なの? いまの仕事を、このくらいにするって決めたのは、モケモフさんができそうだからって決めたんでしょ? それよりも、ずっとずっと多い仕事をして、しんどくならない?」

 言いながらミャイは吊り上げていた目の力を、心配そうに弱めた。

 なるほど、たしかにそうだ。

 私が決めた仕事の範囲は、ミャイの親との相談も交えての、無理のない状態で、という条件を前提にしたものだった。それを犬たちの申し出を受けて増やしたら、どうなる――?

「こんなふうに、ミャイと時間を取ってでかけたりは、できなくなるかもしれないな」

「そうでしょう」

 フン、とミャイが荒く鼻息を吹き出す。

「なんだ。モケモフさんと遊んでもらう時間が減るから、怒っているのか」

 あきれた声を出したのは、鼻筋が通っているほうの犬だった。

「そうじゃないのっ! もう。どうしてわからないかなぁ」

「そうは言ってもな。仕事は効率がいちばんだ。いまやっている仕事より、ずっと効率がよくって、儲かる道があるとわかったら、そっちをしたくなるのは当然だろう?」

 ミャイはムウッと不機嫌に半眼になって、鼻筋が通っている犬をにらんだ。にらまれた犬はすこしも気にせず言葉を続ける。

「いまよりずっと儲けられたら、もっとたくさん、いろんなものが買える。……そうだなぁ。たとえば、そのリボンよりももっといいリボンが買えて、おいしいケーキが食べられるようになるって知ったら、どうだ」

 うっ、とミャイがひるんだ。鼻筋の通った犬が、得意そうな安堵の顔になる。

「そういう問題なんだよ、これは」

「でも……、でもでも。やっぱりダメ」

「強情だなぁ」

「そっちこそ」

 あきれた犬に、ミャイはツンとあごをそらした。

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