2-2-5) 出会い

とりあえず荷物を片付けた私は、クラウスさんに言われたとおりにARHMDで連絡を取った。


クラウスさんからすぐに返事が返ってきて、


「晩ご飯ごちそうするからおいで!」


と言うので、大家さんへの挨拶を兼ねてお邪魔するかな...と考えていたのがついさっき。


「えーーーーーー!!!昔から飛んできたぁ!?」


「は、はい...」


今の私を見ると100人中99人が"苦笑い"と言うような顔をしてるだろう。


ナンデコウナッタ...


それもこれも、クラウスさんが"超"自然に


「そういや凛さんの時代って...」


とか言っちゃったのが原因だよね絶対。あとでご飯奢ってもらおう。もう既に今奢ってもらってるけど。


しかもクラウスさんのご両親だけだったらまだ良かったんだけど、クラウスさんの妹さんもそこに居たからもう居辛いったらありゃしない。


ってか妹さん居たんですね...

しかも同い年。せっかく友達になれそうだったのに、引かれちゃったかな...


「凛ちゃん本当に!?すごいね!!!」


ユリアナさんと言うらしいその妹さんだが...何故か興奮していた。


「え、ええ...なんか変ですよね...」


「いやいや変じゃない!すごいよ!お伽話みたい!」


とっっっっっっっっっても可愛い、女子の私ですら惚れそうなユリアナさんだけど、なんと頭もいいらしい。私と同い年なのに、既に国のお抱え研究者だとか。


しかしいま目の前にいる美少女はそんなことを感じさせない。ただの私と同い年の少女で、しかもすっごく目をキラキラさせてこっちを見ている。


「そういえば、ユリはタイムワープ物が好きだったな」


「そんなこと言って兄さんだって大好きじゃん」


「兄弟似た者同士ってわけだ」


そんなこと言われても、こっちはどうやって反応すれば良いのやら...


「とりあえず、ご飯食べましょう?凛さんのお口に合うといいけれど...」


「そうだ。とりあえずご飯にしよう」


クラウスさんのご両親が気を利かせてくれた。しかし未だに兄弟は目を輝かせて何やらタイムワープ物の話に盛り上がっていた。


「いただきます」


ごはんを一口、ぱくっと食べてみる。

見た感じはご飯が少し丸っぽくて、お味噌汁は私の時代とそこまで変わらない。おかずが...なんだろう。様々な色のブロックがたくさん入ってる。5mm×5mm×5mmぐらいの小さい塊が多分卵と思われる物にとじられている。


ご飯の味は少し甘い...かな?食感はあまり変わらない。

続いてお味噌汁もいただく。こっちは少し味が濃いようだ。


でもどっちも私の時代とあまり変わらないね。美味しい!


そして、最後におかずだけど...どんな味がするんだろ...?


恐る恐る食べてみる。いつの間にか兄弟も話をやめてこっちをじっと見ている。ちょっとそんなに見られると食べづらいって...


「......」


「どう?凛さん」


「美味しいです。食べたことのない味ですがすごく好みです」


「良かった良かった〜」


私が食べたのを確認すると、各々も箸を進めていく。味は正直思っていたよりも美味しかった。見た目もっと改良しようよ。せっかくの美味しさが見た目で損してるよ...


「凛さんの時代はこんな形の食べ物じゃなくてちゃんとした野菜だったんでしょう?」


「え、あ、はい。え、これ野菜じゃないんですか?」


「そうよ〜。これは合成野菜。実際の野菜の味と栄養素を再現した化学合成物なの」


「そうなんですか...」


「昔に比べて宅地とかで農地が減ってきてね、農地なんて本土にはほとんど残っていないわ」


「山とかは...?」


「山はほとんどが森林ね。成長が速い木を植えて木材を産出しているわ」


「そんなに木材が必要なんですか?」


「何言ってるのよ、木材がないと服が作れないじゃない」


「え、木で服?」


「凛さんが今着てるのも木材で作られてるはずよ?」


「そうそう、凛さん今着てる服の裏側にタグ付いてるよ、見てみたら?」


言われるがまま服のタグを見ると


木材:90%

綿:10%


「ええーーーー!!!」


「木材繊維の応用技術が広まったのは80年ぐらい前だっけ?」


「ごめん母さん、俺歴史はからっきしだから」


「兄さんは勉強全般ダメでしょ」


「んなこたぁ無いさ、西語、英語が喋れるトリリンガルだ」


「あーそうでしたね、すごいすごい!」


「......」


妹にいいようにされる兄の図。がんばれ。


「ごちそうさまでした」


「お粗末さまでした」


「それじゃ、何か用があったらここに来てくれよな、お店に居ないかぎり俺もここにいるから」


「はい、ありがとうございます」


「それじゃ、凛ちゃんおやすみ〜!」


「ユリちゃんおやすみ!」


ユリちゃんと一日で打ち解けてしまった。ご飯のあとも前の時代の事を根掘り葉掘り聞かれて...大変だった。まあそのおかげで仲良くなれたんだけどね。


自分の部屋に帰って、買ったばかりのふわふわ布団をベッドに敷いて飛び込む。

ふわふわ〜ふわふわ〜


買ったばかりの今しか味わえない特権を今のうちに味わっておく。

だけど、ふわふわしてたら眠くなってきた......


......


............


....................


ハッ、いかんいかん。シャワーぐらいは浴びないと。


しかし、今日はつかれたし湯船に浸かりたい...


ということで、お風呂をわかすことにした。




「しかし、これどこで体洗うんだろ」


見た感じ体を洗う場所が無い。浴槽内で洗うとしたらお湯溜められないよね。


と思ってたら、あるボタンに目が留まった。


"Body Washing"


これは、"体を洗う"って意味だよね。てか英語って廃れたんじゃないの?アルファベットだけ皇語に取り込まれたとか?でもこれはそのまんまの英語だよね...


まあ、とりあえずお湯に浸かる。やっぱり湯船で肩までお湯に浸かるのが一番だよね〜


さあ、気になるこのボタンを押してみよう。


ポチ。


「うわおぉおお!?」


いきなりいろんなところから泡が噴き出してきた。ちょっとくすぐったいけど、慣れてくると気持ちいい。


1分間ぐらい"泡放射"を体に受けて、体中が綺麗になったところで、既に備え付けてあるシャンプーを手に取る。ワンプッシュで出てくる量が少ないけど、今の時代はこれで十分ってことなのかな?


シャンプーを泡風呂の中で済ませて、シャワーで洗い流す。最後にお湯を抜いてシャワーを浴びて終了!


なんだか人が極力動かないように進化してるなぁ...

さすが日本人。楽することに関しては世界で一番頑張っているんじゃないかな?


ドライヤーも進化して、頭にすっぽり被せる形になっていた。髪が長い人もすぐに乾くし、乾かす時間が短くなったのは嬉しい。


そしてお風呂を済ませたので容赦なくお布団に飛び込む。


「ふいー、今日は疲れた...」


そしてそのまま......


............


........................


................................................


夢の世界へ。

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