過去から来た少女
2-2-1) 異世界...?
頑張ってGW毎日更新するよ...!
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あれ、おかしいな...
さっきまで朝の散歩をしていたはずなのに、気がついたら知らない公園に立ってる。
もしかして迷ったかも...と携帯を取り出してマップを見るが、何故か電波が来ていないようで、地図が表示されない。位置情報も取得できていないようだ。
もしかして異世界に飛ばされちゃった!?などとのんきに考える暇もなく、ネットが繋がらないこの状況で、どこに歩いていけばいいのかも分からない私は途方にくれていた。
湯原 凛、17歳。高校2年生。普通な家庭に普通な学校。今まで普通な人生を送ってきたはずだ。
とりあえず人を探してみよう。そう思って周りを見渡すが人が居ない。とりあえず公園をくまなく観察してみるが、見たことのない遊具があるだけだ。
「あ!」
公園を見渡していると、二人の男女が見えた。その二人に話しかけようとした凛だが、その二人の服装を見て固まってしまった。
その服装は、どう見ても現代の服装とはかけ離れていたからだ。
最初こそコスプレしているのかな?と思っていたが、この時間に誰も観衆のいない道路を歩くなど、考えられない。みんなに見られたくないならこんな外に出るのはおかしいし、見せたいなら時間帯がおかしい。中途半端な今コスプレをする意味がわからなかった。
そして電波の入らないスマホを見て、凛は確信した。
「ここは私のいた場所とは違う!......たぶん」
凛は昔から小説が大好きで、よく異世界ものの小説を読んでいた。それが幸いしたのか特に情緒不安定になることはなく、冷静に行動をすることができた。
「まずはこの世界の情報から...」
言語は同じか。科学はどこまで進歩しているのか。そもそも物理法則は元の世界と同じなのか。魔法が存在してるかもしれない...などと考えつつ、公園を出て道路を歩き出した。
「気温が同じくらいなのが不幸中の幸いだよ、まったく...」
お店を探しつつ周りの観察をしていた凛は、周りの風景に妙な違和感を覚えた。
家の形、道路の形、飛んでいる鳥、雲、この世界の太陽。全てが元の世界とそっくりだったのだ。瓦こそないが傾斜した屋根や玄関。窓の形も遠目で見たらそっくりだ。道路の歩道も同じ。鳥は相変わらず自由に空を飛んでるが、鳴き声はどこか聞いた事があるものばかりだ。雲も太陽も全く違和感がない。
「飛行機は飛んでいないから、航空技術はまだ発達してないのかな」
「飛行機なんて懐かしい事を話すね、お嬢ちゃん」
「わわ!」
「驚かせてしまったようだね、申し訳ない。しかしその服装といい飛行機といい、お嬢ちゃんは昔の事を研究してるのかい?」
昔?えっと、昔は飛行機が飛んでいた?服装?この服装は昔のもの?
その前に、目の前のおじいさん夫婦は私の知ってる言語、「日本語」をしゃべっていた。これは大収穫だ。
とりあえずここは話を合わせて、怪しまれないように情報収集をしよう。
「そうなんです。学校の研究で...おじいさんは今何歳ですか?」
「もう120になるよ、この歳になると足腰が弱くてね。こうやってばあさんと毎日散歩してるんだ」
「120!?随分と長生きされてるんですね。すごいです」
「いやいや、そんな事なぇて。ばあさんなんか130だわい」
「130!?すごいですね...どうもありがとうございました。お散歩、気をつけてくださいね」
「いえいえ、研究がんばってな」
「ありがとうございます」
これ以上話してると素性がばれる。この世界は130まで生きてもあんなに若く見えるのか。見た感じ70後半くらいだったような...
とりあえず、日本語が通じるとわかったし、あとは文字が同じかどうか、それと「昔」の話も気になるところだ。
そして早めに服装を整えないと怪しまれる。
凛はそう思いながらお店を探し始めたのだが...
「お店ってどこにあるの!!!」
お店が見当たらない。工場らしき大きな建物はそこらじゅうにあるのに、お店がない。家以外にあったのは工場、体育館、グラウンド、交番らしき建物、車らしきものがたくさん止まっている建物。
「そういえばどの家も車がなかったな...」
この世界は車は共用なのだろうか。それにしてもお店がないし、車の使い道って家から家までの間くらいだよね...
矛盾が頭の中を駆け巡る。すると、道路上に変なマークが書いてあるのが見えた。
「なんだろこのマーク...」
丸い枠の中に三角形が入っている。"スクールゾーンだよ!"って印なのかな。でもそういえばグラウンドや体育館は見たけど学校らしき校舎は見てないなぁ...
ずっと道路を歩いていると、大きい道路が見えた。あの道路には何かお店があるかもしれない。車も走ってるかな。
そんな事を期待しつつ大きな道路まで足を早めた。
この時凛は気づいてなかったが、道路が妙に綺麗だった。その理由は大きな道路に出た時にわかった。
期待通り、大きな道路にはそこそこ車が走っていたのだが...
「すごい!車が......浮いてる!」
先ほど見た車は下半分が隠れていてタイヤの部分が見えなかったのだが、まさかタイヤが無いとは。そうか、この世界では車は浮くのか。だから道路も綺麗なんだなぁ...
そして、もう一つ。お店があったのだ。しかも超巨大な。
「あれ東京ドーム並みだよね...それより大きいかも」
そして車はその建物の中に吸い込まれていく。車の使い道は殆ど家からこのお店までなのだろう。
凛はそのお店まで急いだ。ここでいろんな情報が手に入りそうだ。
「ひょえ〜」
その大きなお店は、近づくとさらに大きく感じる。大きく日本語で"スターストア"と書いてあり、目の前には"入場"と書いてある看板があった。とりあえず、文字も同じらしい。その事に安堵しつつ入場ゲートまで行くと、先ほど見た人たちと同じような服装をした人々がたくさんいた。
「やっぱりこの服装は目立つよね...」
周りからすごい見られてる。当たり前だ、同じような形にしてもデザインが全く違う。いわゆる"古いデザイン"の服を着てるのだ。元の世界でバロック時代の服装なんか着ていたらみんなジロジロ見るだろう。
「まずは服装からだね」
そう言うと、凛はお店の中まで足を運んだ。
お店に入ると、驚きの連続だった。
朝早いからか、入り口にたくさんいた人たちも中に入ればその広大な敷地に散らばってしまい全く窮屈では無い。
まず目に入ったのは頭上にそびえ立つ棚、棚、棚。
そしてその棚の前をせわしなく動いている......ロボットらしきもの。
そして先ほど道路で見たような丸い枠の中に三角のマークがそこらじゅうに表示されていた。しかし三角の中に数字が書かれていて、それぞれ違う数字が割り振られているようだ。
困った事に商品は全て棚にあり、凛は手にとって見る事が出来なかった。
棚の下にあるカウンターを眺めつつ途方に暮れてると、横から声がかかった。
『何かお探しでしょうか』
それはロボットだった。顔の位置にはタブレットサイズの画面。下は筒状でまるでハリウッド映画に出てくるあのロボットみたいだ。
「商品を見たいんだけど、全部棚の上にあって見れないの」
とりあえず今の現状を伝えるとそのロボットはその画面を切り替えた。
『AR-HMDをお持ちでないのですね。それではこの画面で商品をお探しください』
その画面はいわゆる"商品検索画面"だった。とりあえず凛はそれを使って服を探した。
「いろんな服があるのね...あ、これいいな」
とりあえず服のデザインを決めた凛は、ここである問題に出くわす。
「ここの世界のお金無い...」
この世界に来てまだ数時間。お金など一銭も持っていなかった。元の世界の硬貨や紙幣は持っているが、この世界で使えるとは思えない。
結局まだ服は買えないか...と案じていたが、ふと思いついたように目の前のロボットに話しかけた。
「ここで物を売ることはできる?」
『可能です。ここに売りたいものをお載せください。すぐに査定いたします』
そう言うと画面の下あたりからプレートがすっと出てきた。
『ここに載り切れない、載せられないものでしたらカウンターまでどうぞ』
凛はとりあえず今持っている硬貨と紙幣を置く。この世界で元の世界のお金は必要無いだろう。トレーが自動で収納され、お金が機械の中に入り込んでいった。
『査定中です。しばらくお待ちください』
『申し訳ありません、この商品はここではお取り扱いできません。すぐに専用の係の者を呼ぶのでもうしばらくお待ちください』
そうか、やっぱりダメか...ただの紙切れにただの銅や亜鉛だし、価値が無いのかな...しかも綺麗じゃ無いし、合金だし。
すると、目の前のロボットよりふたまわりほど大きなロボットがやってきた。
『お待たせして申し訳ありません。ここからは私が担当させていただきます』
そう言うと、目の前の小さなロボットから私のお金を預かる。小さなほうのロボットはその後他のお客の対応にまわされるのだろう、その場を離れて他の場所へと移動していった。
新しいロボットは画面もそれ相応に大きく、家にあったPCのデスクトップに負けない大きさだった。
『この商品は、ただいま普通の手順では売買できないようになっております。理由として大変高価であること、また偽物が出回っていることが挙げられます。そのため国の定めた機関が厳重に査定し、本物だと認められた場合のみ適正価格にて売買させていただいております。ご了承ください』
驚いた。高価なのか。想像と真逆の答えが返ってきて驚いた凛だが、とりあえず必要な情報を集めることにした。
「まず、査定にはどれだけかかる?それとここで簡単に見積もりは出せそう?」
『査定には3時間ほどいただいております。見積もりですが、だいたい400万円ほどになるかと』
「400万円かぁ。どれぐらいの価値なんだろう」
『一月にかかる一人分の食費がだいたい3万ほどとなっております』
凛の独り言に律儀に回答してくれたロボットだが、凛はその答えを聞いて頭の中が真っ白になった。
「え?3万?あまり変わらないなぁ...えっと、400万もらえるんだっけ?あれ?」
『あくまでも見積もりですので、この金額より高くなる可能性があります』
「さらに高く?えっと400万だから...」
頭が混乱している横でそのロボットは画面を切り替えた。
『本人確認に使用しますのでここに手にひらをお載せください』
言われるがままに手のひらを乗せる凛。
『登録該当なし。ご来店は初めてでしょうか?』
「はい...」
『当店では売買には個々人のアカウントが必須となっております。作成してよろしいでしょうか?』
「よろしくお願いします...」
『了承しました。お待ちください』
『ここに情報をお書きください』
その画面には名前、年齢、生年月日を書き込む欄があった。凛は元の世界とそっくりすぎだなぁと訝しみつつ、生年月日をそのまま書き込んでいく。
『作成します、しばらくお待ちください』
『生年月日と年齢が不一致。記入ミスがあります。もう一度正しい情報をお書きください』
そう言われて凛は画面を見ると、目を丸くした。
『17歳でしたら西暦は22XX年です』
と書いてあったのだ。
凛はここに来て確信した。
「ここ、私と同じ世界の"未来"だ...」
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