2-1-7) 農場棟

ゴールデンウィーク、もしかしたら毎日更新するかもです。できたらね...!

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「まずは材料集めからだな」


「壁面はガラスがいいなぁ」


農場棟は、ロゼが考えたデザインで作ることにした。拠点は俺が作ったからな。


「柱は原木、床は木材ハーフブロック、一階は倉庫で...」


ロゼが次々と考えだすアイデアを簡単な図面に書き起こす。目の前にホログラフィックで表示されるそれは、ガラス張りの立体農場棟だった。


ガラスは砂を焼くことで作成できる。ちょうど東に遭難した砂漠があるのでそこから調達することにしよう。


話し合いの結果、俺は砂漠で砂集め、ロゼは原木集めをする事になった。


「とりあえずじゃがいもを植えておこう」


「どうする?小麦畑の場所に植えちゃう?」


「そうだな、小麦は結構集まってるしそこをじゃがいも畑にしよう」


材料集めの時間を有効に使うために、まだ数が少ないじゃがいもを植えておくことにした。


出発の準備を終えた俺達はそれぞれ目的地まで歩き出した。


「リスポーンしないようにね〜」


「保証はできない」


「とりあえず夜になったらメッセ送るから」


「ok」


そう言って別れ、俺は砂漠へと歩き出した。

歩く道に松明を置いていく。また遭難でもしたら堪ったものではない。


程なくして、森林を抜けて砂漠に出た。着いた頃にはすでに太陽は頭の上だった。俺は仮とも言えないような小さな拠点を作り、鉄のスコップで砂を掘り始める。


シャッシャッシャッ。


砂はとても簡単に取れるのでところ構わず掘りまくる。すぐにスコップが壊れてしまうが10個ぐらい持ってきてあるので気にせずどんどん掘りまくる。


シャッシャッシャッガギン。


スコップが壊れた音がしたらインベントリを開き新しいスコップを取り出す。その繰り返しだ。言葉は一切話さない。独り言はあまりしゃべらない方だ。


しばらく掘り掘りしていたら、ロゼからメッセージが飛んできた。


『そろそろ夜だから寝るよ〜』


メールを読んでから辺りを見渡すと、いつの間にか辺りは暗くなっていた。

モンスターが沸く前にベッドへと向かわなくては。


『了解。そっちはどれくらい集まった?』


『まだ予定の半分くらいかな〜』


『こっちと同じくらいか』


『じゃあ明日一日集めたら終わりってことで』


『あいよー』


そういいつつベッドに身を投げる。

"寝る"と念じるだけで勝手に意識が遠のいていく。現実世界ではすぐに寝れない人もいるが、この世界ではその心配は無用だ。


朝になった。


シャッシャッシャッ。


シャッシャッシャッ。


シャッシャッシャッ。


単調な作業に飽々してきた。何か音楽でも聞きたい気分だ。


"Music"


"アルバムランダム再生"


『アルバムを選択してください』


何にしようか適当に悩んだ末、インスト(歌なしのメロディのみの曲)を聞くことにした。


"Road to Next"


こどもの頃に遊んだゲームのサウンドトラックだ。懐かしいメロディを聞きつつ、俺は作業を再開した。


そういや、このゲームが作られた頃は"Final Fantasy"とか言うゲームが流行ってたらしいな。確か今でもゲームアーカイブスでできたはずだ。あれは結局XXまで作られたんだっけ。20ってすごい数だな...


今人気なのはIVとVIIとIXとXVIIだ。すべて当時とは比べ物にならないぐらいのグラフィックスでリメイクされている。特にIXが人気で、あの涙腺にぐっとくるストーリーが口コミで広がりダウンロード数はRNRoad to Nextに匹敵するほどだ。最近はVIIの人気も上がっている。RNも負けてられないと新作を出しており、次回作はSWで出るかもしれないとファンの間でまことしやかに噂されている。


RNの曲はかっこいい曲から物悲しい曲までいろいろとあるので作業用にぴったりだった。無意識にスコップをすべて使い切るまで砂を掘り続けていた。


『ロゼ、こっちはすべて終わった』


『もう終わったの?こっちはあと1/4って所。先に拠点で待ってて〜』


『了解、手伝おうか?』


『大丈夫。それより砂からガラスを作る作業をお願い〜』


『あいよ〜』


拠点は前回と同じく建屋とチェスト、作業台だけ残しておくことにした。大量の砂は一回で運べる数ではなく、松明を頼りに何往復もすることになった。


砂を運び終わるとあたりは暗くなり始めており、ロゼから連絡もあって拠点のベッドで寝ることにした。ぴったり2日かかった計算だ。


それからはかまどを大量に作り砂を焼いていった。石炭が不足しそうだったのでロゼが帰ってくるまで洞窟に行って石炭を掘り掘りした。意外と慣れてきたのか、もう一人でも洞窟に潜れるようになっていた。鉄装備着てるしね。


『ふぅ〜やっと終わった〜、今から帰る〜』


『あいよ〜』


ロゼも終わったらしいのでキリの良い所で洞窟から拠点へと帰った。石炭は3スタックぐらい集まった。


「お疲れ様」


「おつかれ〜」


「それじゃあ建築始めますか」


「よっし!」


自分で設計したからか、妙に気合の入っているロゼ。俺はサポートに徹しつつ農場棟を建築し始めた。


農場棟の建築はなかなか難しかった。壁を作っている時に何回も落下したり、床を貼ってて一階下におちたり...装備を着てなかったら死んでた場面も多かった。


そしてついに、材料集めに2日、さらに建築に2日かけて、農場棟が完成した。


外壁はすべてガラス。一階の高さはすべて2マスにし、畑を踏み荒らさないようにした。耕地面積は横に通路、4マス、水用の隙間、4マス、通路、4マス、水用の隙間、4マス、通路という感じで、奥行きは20マス。水は屋上から下に流す方式。当初の設計通り、一階は高さ5マスの倉庫にして、その上に5段の農地を積み重ねた。計6階建てだ。拠点よりも遥かに高い。


「ふぅ〜、これで美味しいパンとじゃがいもが食べ放題!」


「食い意地張り過ぎだぞ...」


実際おいしいのは間違いないし、俺も地味に嬉しいのは内緒の話だ。


早速小麦とじゃがいもを二階分、にんじんを一階分植えた。明かりは通路に松明を置くことで確保している。


合計1200マスの耕地にすべての種を植え終えた俺達は、食料の安定供給がやっと始まることに安堵し、拠点よりも遥かに大きい建築を無事に終え、喜びながらログアウトしたのだった。






「ふぃ〜おつかれ〜」


「おつかれさん」


時計を見ると、既に6:30を指している。


「カイ〜ロゼ〜、ごはんできたよ〜」


「「は〜い」」


下から母の声が聞こえる。ちょうど夕飯ができたみたいだ。

今日の夕飯はなにかな。




朝、布団から起きて顔を洗っているとロゼが起きてきた。


「おはよ〜」


「おはよ。ちょっと待っててな」


顔を洗い終わったらうがいだけして下に降りる。俺は朝ごはんを食べてから歯を磨くタイプだが、世の中には朝起きてすぐに磨く人もいるようで、どっちが歯にいいのか研究をしているらしい。研究職が多くいる現代はこんなヘンテコな研究にも数百人の研究者がとりかかってるのだ。俺もそろそろ研究テーマを決めなくてはな。さもないと永遠にレーンを流れてくるロボットのメンテナンスをする羽目になってしまう。


閑話休題、朝ごはんを食べた俺は学校へ行く準備を済ませ、玄関を出た。今じゃネットを利用した授業のほうがマジョリティだが、俺が行ってる学校は未だに校舎をもち、みんなで同じ教室に座って授業をする。俺がこの学校を選んだ理由は、同年代の友達と顔を合わせて話ができ、体育などで一緒に遊べるからだ。殆どの学校は授業はネットで、体育などは所定のスポーツセンターで老若男女集まってスポーツをする活動があってそれに参加すればOK、という形式をとっている。


今日は座学が4限、体育が2限の合計6限だ。最後にある体育が一日を元気に過ごすためのご褒美として待っている。


ロゼも同じ学校なのだが、俺はいつも朝早くから学校に行ってしまうため一緒に登校することは少ない。あいつはいつもギリギリに来るからな...


「カイ兄〜」


「ん?ロゼか。珍しいな、こんなに早く登校するなんて」


「今日から週番だからね〜」


週番は朝から仕事があるから、他の学生より早く登校しなければいけない。ロゼは今日から週番のようだった。


早朝は人が少ない。周りを見ても朝の散歩をする老人夫婦や犬の散歩をする女性、ランニングをしている男性がチラホラと見えるだけだ。

俺たちは毎日のようにすれ違う人たちに挨拶をしつつ、学校に向かう。




ふと何の気なしに公園を見やると、そこには今はもう見ない素材の服を来た女の子がいた。


「今時あんな服着る人もいるんだなぁ〜」


「ん?誰?」


「ほら、あそこの公園にいる人」


「ほんとだ。あれ博物館でみたのと似てるよ?まだ持ってる人が居たんだね〜」


そんなことを言いつつ俺達は学校へ向かったのだが、午後の体育の授業で楽しく遊んでいる時にはすっかり頭から抜けていたのだった。


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ここで一度区切りを入れて、現実世界へと話が移ります。

多分すぐにゲームの世界に戻ってきますが、現実パート、お楽しみください。

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