2-1-2) 初代拠点と洞窟探索1
「わぁお...」
「どうだ、少しはマシになったろ」
目の前には"それっぽい"家がある。
地面から1マス浮かして木材の床を張り、敵の攻撃を寄せ付けないようにぐるっと一周廊下をめぐらせる。ここから弓を使って安全に攻撃可能だ。
玄関ドアを抜けると真っ直ぐ伸びる廊下。反対側にも同じようなドア。部屋は左右2部屋づつ、計4部屋だ。すべてただの直方体だが初代拠点にしては良く出来たほうだろう。2つは倉庫、一つは寝室、一つは今後作るであろうエンチャント台の設置場所だ。
寝室からはハシゴを使って屋上に登ることができる。屋根は三角ではなく平らにしておいた。これから畑を作って小麦を育てる場所にするためだ。
「石炭と小麦は手に入ったか?」
「ばっちり。石炭は5スタックも集めちゃったよ〜」
「5スタックとかどれだけ掘ったんだ...」
「なんかいっぱい地面に露出してたから全部掘っちゃった。掘ってる時にクリーパーに3回ぐらいやられそうになったけど」
「よく死ななかったな...」
「一回死んだよ」
「へ?死んだ?」
「うん。クリーパーに後ろからドカンと」
「ドカンと」
「一回視界が暗くなって最初の場所の近くに飛ばされたよ」
「飛ばされた」
「経験値とアイテムが全部なくなっちゃったけど、死んだ所に戻ったら結構残ってた!」
「これが俗にいう"リスポーン"か...」
「そうそれ!」
たまげたものだ。リスポーンか...経験値がムダになるしアイテムが確実に回収できるかわからないしできるだけ避けたいところだな。
ロゼから石炭を受け取るとクワを逆に渡す。
「屋上の土耕して種まいてきて」
「あいあいさー」
動画で見たとおりだとクワで耕して種をまけば後は自動で小麦が育つらしい。他になにかやってた気がするが...思い出せないな。
俺は受け取った石炭を使い松明を作成。家に設置してモンスターのスポーンを防ぐ。これで夜も明るいぞ。
松明ができて石ツールも結構な数作った。あとは食料だけどうにかすれば洞窟探検に行けそうだ。
屋上にきたロゼは首を傾げていた。
「おっかしーなー、種をまいても少しするとただの土に戻っちゃう」
カイ兄に言われたとおり、クワで土を殴ると"こーさくち"になるんだけど、その後時間が経つと普通の土になっちゃうんだよな〜。どーいうことでしょうねこれ。
動画でもこんな感じにやってたんだけどな...
しばらくロゼは悩んでいたが、とうとう諦めてNaryで検索することにした。
「こういう時Naryは便利よね〜、おお発見発見」
相手がいないのであるが、ロゼは独りブツブツと喋っている。独り言を言ってしまう癖なのだろう。
「なんと!"こーさくち"には水が必要とな」
水はどうやって持ってくるんだっけ...とまたしても独り言のようにつぶやきながら仮想ブラウザを操作するロゼ。
「なるほどー、うんうん、そーいうことね!つまり"バケツ"を作ればいいと」
Naryには次のように記載されていた。
"鉄3つを三角のように並べることによりバケツを作成できる。バケツは水を運べるほか、溶岩も運べ、牛に対して使用すれば牛乳を採取できる。ムーシュ..."
つまり鉄3つでバケツを作らないといけないらしい。
鉄鉱石はちょうどよく石炭を掘っている時に数個入手していたので、
「早速精錬だね〜」
石炭はかまどに入れると何も焼かなくても燃えきっちゃうらしいので持ってるだけ鉄鉱石を焼いておく。計9個。そのうち3個だけ取り出す。
「えっと...三角形だよね。よし、バケツげっと!水はいずこ...?」
さっき散策してた時に見つけた川まで調達に行く。カイ兄は家中に松明を設置していた。
バケツは手にとって水をすくうだけで水入りになった。しかし重さは変わらない。VRゲーム万歳。
ロゼは二往復してNaryでついでに学んだ"無限水源"を作成した。
「水源2つで無限に水が取り出せるなんてね〜」
無限水源を使って屋上に水場を作る。その後クワを使って耕すと、耕したところが次第に暗い色に変わっていった。
「これでおっけー!」
種をしっかりまいたロゼはカイ兄に報告するためにはしごを降りるのだった。
下に降りてきたロゼは俺の所に走ってきた。
「屋上の畑終わったよ〜」
「随分時間がかかったな」
「水源が無かったからバケツ作って水くんできた〜」
「ああ...忘れてた」
俺はうなだれた。動画を見てしっかり覚えてたはずなんだがなぁ...
「それよりもカイ兄、洞窟探検したい!」
「......そうだな、小麦が育つまで時間がかかるらしいしまずは洞窟を探そうか」
まずは洞窟を探さなくちゃな。鉄装備は早々に作っておきたいし、ダイヤを見つけてエンチャント台を作れば作業効率もぐんとあがる。洞窟探検はMinecraftの醍醐味の一つと言ってもいい。
ロゼと俺は石ツールと松明を持って拠点を後にした。
そこまで探すことなく洞窟は見つかった。一旦洞窟入り口に松明を設置して拠点までの帰り道を松明で湧き潰しする。これで帰りも安心だ。
「よし!ダイヤ見つけるぞ〜」
「今回はそこまで深く潜らないから...」
「ちぇ〜」
ちぇ〜じゃないよちぇ〜じゃ。まずは鉄装備を揃えて洞窟内の湧き潰しをしないとだ。
そう説明するとロゼは意気消沈してしまったがしかたない、と諦めてくれたようだ。
「まずは鉄鉱石を探そう」
「探そうなんて言わなくてもそこら中にあるぞカイ兄」
「そうだな、じゃあ二人合わせて2スタックは集めよう」
「2スタックとな!それは多すぎじゃない?」
「そうでもないぞ、二人の装備で1スタック近く消えるしツールは消耗品だからな」
「まあそうだね〜。いっちょ始めるとしますか!」
松明で湧き潰しをしつつ進むロゼと俺。
鉄鉱石は存外多く、順調に集まっていった...だが。
「待って、これどれだけ洞窟大きいの...???」
「予想以上に大きいぞこれ...」
この洞窟、入ってすぐからもう広いのなんの。
これじゃあお先が心配だよ...
「とりあえず石炭と鉄鉱石は見つけ次第回収な」
「へいへーい...あ、ピッケル壊れた。カイ兄、木材持ってる?」
「木材くらい持ってこいよな...ほい」
「ありがとー!」
ロゼは早速木材から棒を、できた棒と石を使ってピッケルを作った。なかなか手際が良くなっている。
......と、ロゼがいきなりこっちに吹っ飛んできた。
「うわっ何だ?」
「おう、どうしたいきなり」
「多分スケルトンが弓打ってきた」
「え、結構やばくね...?」
「大丈夫、今狩ってくる」
おお妹よたくましい...お兄ちゃん泣きそうだよ。
と、そんな戯れ言を言ってる暇はないようだ。次々にゾンビやスケルトンやクリーパー、クモが襲ってくる。ロゼが出発前にくれた鉄を使った鉄剣で俺もゾンビたちを斬っていく。斬ると言ってもざっくり斬るのではなく、斬りかかると敵を殴ったような感覚がして敵が吹っ飛ぶのだ。剣と言いながらさながら棍棒のようである。
「こいつらどこから襲ってくるんだ...」
「カイ兄、上!上!」
ロゼに言われるがままに上を見る。そこにはまだ湧き潰しのしていない空間があった。そしてそこからゾンビたちが降りてくる。
大元をどうにかしないとな...
「ちょっと湧き潰ししてくる」
「えっちょっとまってカイ兄」
「大丈夫、大丈夫」
さっきからロゼにばっかり戦闘させてる気がするぞ。ここで兄としての威厳を見せなければ!
そして高台に登った俺は、目の前の光景に絶句した。
「何だこの数...」
そこには全体で10は超えるゾンビ、スケルトン、クリーパーがいた。
この数相手じゃいくら命あっても足りねえよ!と毒づきながらも片っ端から倒し始めた。一瞬でも隙ができたら松明で湧き潰しをしていく。
後は最後のスケルトンを片付ければ終わりだ。
「よし、これで終r」
"シュー..."
「あ......」
これは俗にいう"詰み"ってやつ?やばいどうしよう....
リスポーンするから死ぬのはそこまで怖くないはずなのにいざとなるととても怖い。やっぱり仮想世界といえど現実で怖いものは怖いのだ。ロゼはよくリスポーンしても平気だったな...
一種の走馬灯のように一気に考えが頭をめぐる。
「危ないカイ兄!」
ザクッ
ドーーーーーーーーーーン
...ん?
......あれ?
リスポーンってこんな感じなの?まだこの場に立っているような感覚なんだが...
「大丈夫じゃないでしょ、カイ兄。危ない所に一人で突っ込むのは危険だよ」
そりゃ危ないところだもんな...という言葉はぐっと喉の奥にしまいこんで...って俺死んでないのか!いや〜危なかった。お礼を言わなくては。
「いや〜助かった。危うく俺もリスポーンするところだった」
どうやらクリーパーはロゼの攻撃でノックバック(吹き飛ばされること)されて俺から遠い所で爆発したみたいだ。俺は強めの風圧を受けただけで体力は半分も減っていなかった。
......結局ロゼに助けられるという。いつかお返ししてやるぞ!
そんなこんなで採掘を進めていたが満腹度が結構減ってきて、しかも最初に用意した松明も尽き始めて来たのでそろそろ帰ることに。大体4日ぐらい経っていた。
「結局どれだけ集まったかな」
「私だけで2スタック半はあるよ」
「マジか、俺は1スタック半だから...だいたい4スタックか。目標の2倍くらいだ」
なんと、予定の二倍。これは大収穫だ。早速戻って精錬するとしよう。
流石に屋上の小麦も収穫できるまで育っているだろう。
俺とロゼは湧き潰しの済んでいる、モンスターのいないところを歩いて拠点へ帰った。
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