Minecraft開始!

1-2-1) カイとロゼ

ピピピピ...ピピピピ...


目覚ましが少し抑え気味に朝を知らせる。


「あと5分...」


布団から一本の手が伸びて目覚ましを止めようと辺りを彷徨う。

しかしその手は目覚ましを見つけられない。


ピピピピ!! ピピピピ!!


段々とうるさくなっていく目覚まし。しかしまだ目覚ましは見つからない。


「あーもう!」


ついに布団の主は怒りだした。すると、不意に頭の上から声がする。


「もう起きる時間だぞ〜!」


「あとちょっとだけ〜5時間くらい〜」


「何言ってんだカイ兄、今日は買いに行く日でしょ?」


...。

......。

............。

........................。


「あーーーーーぁぁぁぁぁあああ!!!!もうこんな時間!?なんで起こしてくれないの!!」


「起こしたよ...ちゃんと目覚ましも鳴ってるし」


そう言って目覚ましを持つ彼女を見る。目覚ましが見つからなかったのは彼女が手に持って動かしていたからだった。


「とりあえず朝ごはん。お母さんが下で待ってるからねー」


「あいよー」


着替えつつ返事をする。

俺はカイザー。大和皇国に住む19歳学生。双子の妹のローゼと両親と4人暮らし。俺はカイ、ローゼはロゼと呼んでいる。

今日は前々から予約していたフルダイブVR、「Sky Water」を買いに行く日だ。

いろいろなゲームがあったが、ロゼたってのお願いで「Minecraft」を購入することにした。なんでもネットを漁ってみた所、大昔の動画が残っていてそれを見てやりたくなったのだそうだ。


朝ごはんを食べ終え、身支度を済ました俺はロゼと共に近くのゲーム屋に直行する。


「うひょ〜...」


「すごい人だかりだな」


「そりゃ、夢のゲームだもんね〜」


「夢のゲームねぇ...」


今までにいろんな小説が出てきたが、フルダイブ型VR装置を使った話もたくさん出ていた。"こんなゲームがあったらなぁ..."という作者の夢を土台に話を膨らませて書いたのだろうが、それが遂に現実になったのだ。

俺達も列に並び順番を待つ。


ピッ


すると視界上に文字が出てきた。最近では学生になったら一人一つ持つことが当たり前になったHMD型AR装置だ。


"7番へどうぞ"


言われた所へ行くとロボットが"SWSky Water"を持っていた。

今では従業員はロボットが殆どで人間は定期メンテナンスや指示の変更などしかやっていない。人々は「ロボットの整備や操作」か「各種研究」のどちらかをすればいい。それと政治は人間がまだやっている。ロボットが政治もやっちゃったらそれは人類の国ではなくなっちゃうからね。


お金は研究などをちゃんとやっていればしっかりもらえる。使いみちは様々で旅行に使ったり食べ物に使ったり、俺達みたいにゲームを買ったり。今はお金に困っている人はほぼ0と言っていいだろう。教育はすべて無償、食べ物もほぼ無料と言っていい値段だ。これも科学力の進歩で食料が安定して供給できるようになったため。


"SW"をgetした俺達は一緒に予約したMinecraftも受け取る。


「なんじゃこのキャラは」


「そういうコンセプトだから」


今じゃリアルと何ら変わらない景色でリアルと何ら変わらないキャラクターをリアルと何ら変わらない動作で動かして遊べるというのに、パッケージに描いてあるキャラはカクカクしている。まあ一応前調べはしていたから知ってはいたんだけどね。こうやって実物見るとやっぱり「レトロゲー」って感じがハンパない。


さっそく家に帰ってSWの設定をする。生年月日、性別、大まかな身長、体重、使用言語、持病の有無など...

一通り設定が終わったら早速頭に装着する。ベッドの上で楽な姿勢になったら、


「Sky System Start!」


OSであるSky Systemを起動する。まずは俺が最初に起動して安全に動作するか確かめてから、ロゼも同じように起動する手筈になっている。


"Welcome to Sky Water"


"これからあなたの五感をSky Waterへ接続します。目を閉じて体から力を抜いてください"


"確認。接続します"


ふいにベッドに寝ている感覚が無くなる。この前行った宇宙軌道リニアで初めて経験した、無重力みたいな感覚だ。


"目を開けてください"


言われるがままに目を開ける。しかし開けているのは俺の脳内でだけで実際は開いてないんだろう。

目の前にはSky Waterのマスコットキャラ、空水レイがいた。


"今から確認テストを行います"


まずは視覚のテスト。色や文字を見て何か答えるというものだ。実際は脳内で答えを出した時点で向こうが認識できるのだが、発音や動作のテストも兼ねているらしく口頭で答える。


"テストは以上です。ホーム画面へ移動します"


ホーム画面が出てきた。空間上に様々な画面や泡、文字が浮かんでいる。プレイヤーがその間を動きまわって触れることで起動できるようだ。移動は方向を意識するだけで簡単にできる。ちょっと楽しい。


とりあえずロゼに報告するためにログアウトする。


"目を閉じてください"


目をとじると一瞬体の感覚が無くなる。するとだんだんベッドの感触が戻ってくる。

完全に感覚が戻ったあと、体が動かせるようになった。


「お、帰ってきた帰ってきた」


ロゼに起動後の設定などをだいたい教えて同じようにやらせてみる。しばらくして起きてきたロゼと一緒にMinecraftのチップを読み込ませ、再びSWにログインする。


今度は直接ホーム画面へ飛ばされる。そこで新たに追加されていたMinecraftを選択する。


やっと夢のゲームで遊べるぞ...!


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