第10話

 中間テストの時期になった。僕たちは各教科の先生に取材して、テスト対策の記事を書いていた。他方部長は日本ダービーの予想を載っけようとして生徒指導の先生に怒られていた。


 中間テストの結果が返ってきた。可もなく不可もなしだった。季節は夏に近づいていた。セーラー服も夏服になった。佐藤さんは夏服をパタパタさせて「扇風機買いませんか……」とボヤいていた。

 僕たちは、うちわを扇ぎながら新聞を書いていた。僕は依然としてテレビ欄の担当だった。ある日、思い切って部長に切り出してみた。

「BSやケーブルテレビの記事を載せられないでしょうか。今は好みが多様化していますし。うちの地方は民放が3局しかないですから、『地上波のバラエティがつまらない』という人もいるでしょう」

「面白い。やってみなさい」

 しばらく僕は、家族とチャンネル争いをすることになった。


 ある日の帰りだった。携帯で通話している佐藤さんを見かけた。「わかってる……わかってるから」と言って、彼女は通話を切った。中間テストのことと関係があるのかなと思った。そっとしておくほうがいいと思い。彼女に声をかけることはせず学校を去った。


 次の日、佐藤さんは部室でスースー居眠りしていた。

「珍しいですね」

「そっとしといてやれ」部長が言った。

 寡黙な中村さんは、黙って佐藤さんをパタパタとうちわで扇いであげていた。佐藤さんの居眠りは穏やかだった。

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