第6話
部長と中村さんが、共同で記事を書いた。野球賭博のニュースが世間を騒がせており、それに便乗して、と言ったら二人に失礼だが、その昔パ・リーグで起こった「黒い霧事件」なるものについて調査して記事を書いたのだった。
野球部の顧問の先生はこの記事を評価してくれた。
「あの問題児もたまにはやるじゃないか」
当然、問題児とは部長のことである。
それはともかく、中村さんが、野球部への出入りを許されるようになった。
僕はといえば、中学時代聴いていた深夜ラジオの文字起こしにとりかかっていた。けれども、深夜ラジオという性質上、猥談というか下ネタを語るパーソナリティもいて、それをヘッドホン無しで部室で流していたので、副部長が顔を真っ赤にする事態に発展し、部長に無言でヘッドホンを手渡された。
部活終了後、部長と僕は、石段に座り、缶コーヒーを飲んでいた。
「麻子のうろたえぶりは傑作だったな」
「部長……深夜番組って、下ネタだけじゃないと思うんです」
「というと?」
「時に、MCがリスナーに真剣に語りかけてくる瞬間がある……それはテレビとはまた違ったものだと思うんです」
「じゃ、それをどうにか『言葉』にしてみろよ」
そう言って部長は石段から立ち上がった。
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