第30話 絶望

 正行と美緒の2人は完全に諦めていた。



 ─勝てない。絶対に言継にはかなわない。



 それを思っていた。2人とも勝てないことを悟っていた。



 「ほぉ、軍門に下るんだな。赤城団の」



 言継はかなり上から目線で言葉を話していた。だが、正行と美緒はそのことに文句を言わない。すべてが事実であるからだ。2人が赤城団にかなわなかったのは事実だ。だからこそ、何にも抵抗することなく軍門に下ることにする。



 「では、2人には赤城団の本部で人質として十分な役割を果たしてもらおうか」



 「くぅ」



 「うぅ」



 2人とも文句を言いたいができない。


 2人の体はすでに言継によって拘束されているからだ。一瞬で拘束されてしまったのだった。


 2人は、どうやって拘束されたのかわからなかった。それぐらいの速業で行われたのだ。



 「さあ、こっちだ」



 無理やり歩かされる。



 ─バターン死の行進、か。


 第二次世界大戦の時にあったという出来事を正行は思い出していた。無理やり歩かされて別の収容所に移動させられる。今の正行たちの姿はその姿と被った。



 「俺達、この後どうなるんだ」



 「さあ、でもいいように扱われないのでだけは分かるわよ」



 俺と美緒は無理やり歩かされている中、愚癡というか今後のことについて話す。



 「無駄だ。お前達は人質として扱わせてもらう。逃げることもいいように扱われることもないと思っておけ」



 「「……」」



 扱いはひどいと宣言されたことで正行たちは絶望する。


 逃げ出すこともできない。


 人質としての扱いもひどい。


 そんな言葉を聞いてこの先に希望を抱くことができるわけがない。



 「逃げたい」



 「だね」



 2人は逃げたいという気持ちにいっぱいになる。なるが、できない。何とも絶望的な状況であった。とても悲しいことになっていた。



 「逃げるつもり、か。だが、そんなことはできない。まあ、味方が助けなければの話だけど」



 「味方?」



 「助ける?」



 正行と美緒の2人は、言継の言っている言葉の意味が分からなかった。



 「……バレてたのね」



 「見つかっていたのか」



 言継の言葉の後、正行と美緒の目の前に2人の男女が現れたのだった。


 そして、その2人はそれぞれ正行と美緒の知っている人物であったのだった──

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