第28話 再出

 「──正行、林正行!」



 「は!」



 正行は目が覚めた。



 「誰だ俺を呼んだのは!」



 声をかけられていた。


 その声によって正行は起きた。



 「わあ、いきなり声を荒げないでよ」



 「お前は美緒!」



 「私達そんなに仲がよかった? 名前で呼んでいたっけ?」



 美緒がおどけて言う。




 「わ、悪い……って、勝手に逃げ出した奴が何を言っている」



 正行は言継との戦いのことを言う。


 勝手に逃げ出した美緒を正行は攻める。


 どうしてあの時、逃げたのか。他に方法はなかったのか。いろいろなことを美緒に言う。それは、正行自身が言継に勝てなかったことの八つ当たりをしている光景であった。正行も本当のところ分かっていた。



 「……私だって自分の命が一番大事なのよ」



 「それは分かっているけどさ」



 「なら、仕方ないでしょ」



 「……」



 正行は文句が言えなかった。



 「悪かった。俺の言いすぎだった」



 正行はこれ以上美緒を攻めるのは悪いことだと思い謝る。


 美緒も正行に謝られてばつが悪そうにしている。



 「私も勝手に逃げたしごめんなさい。でも、もう大丈夫だよね。赤城団の本部は諦めて別の方法で榛名団と妙義団の対決を止めよう」



「ああ、そうだな。赤城団に近づくことができな──」



 正行は途中で言葉を失った。


 なぜか。


 なぜ、途中で話すのを辞めてしまったのか。


 その答えは目の前にあった。


 美緒はどうして正行が言葉を途中で止めたのかよくわかっていなかったようだ。


 美緒は体を後ろに向ける。



 「え?」



 美緒も衝撃を覚えた。


 美緒と正行。2人が見た光景とは何か。


 それは──



「ようやく見つけたぞ。赤城団のテリトリーに入って無事に帰れるとは思うなよ」



 「くぅ、言継」



 「き、来たの?」



 2人の前に再び言継が現れたのだった──



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