第26話 斬撃

 正行は、一気に言継と距離を近づける。



 「えいや」



 刀を思いっきり正行は言継に振り下ろす。



 ─大丈夫だ。言継は武器を手に持っていない。完全に丸腰だ。



 「すきああああありいいいいいいいいい」



 「どこに隙があると思っているんだ?」



 カキン



 金属音のような甲高い音が正行の耳に響いた。


 正行の振り下ろした刀は言継の顔のぎりぎり前で止まっていた。刀と言継の間にまるで盾があるのかのような状況であった。



 「ちぃ」



 正行は後ろに1回下る。


 警戒を高める。


 高めつつ今起こったことについて考える。



 ─何が起きた。バリアみたいなものが俺とあいつの間に出来ていた。そのバリアは透明だ。まったく見えなかった。それにあいつは何も動いていなかった。



 正行は、必死に考える。


 何が起こっていたのか。どうやればその現象を破ることができるのか。



 「今のはどういう手品だ?」



 正行は言継に聞いてみる。もちろん、答えが返ってくるとは思ってもいない。言継の反応を見るためにわざと聞いてみた。



 「わざとそんなことを言っても答えたりはしないぞ。私がうっかり話すとでも思っているのか」



 「……やはり、無理か」



 「無理に決まっているだろう」



 正行の額から汗が垂れる。



 「斬撃漆黒波!」



 正行は次の手を考える。


 だが、その前に刀を思いっきり縦に振り斬撃を言継に放つ。


 漆黒の斬撃が放たれる。



 カキーン



 漆黒の斬撃は謎の甲高い音により言継に届くことはなかった。言継に届く前に防御されたのか攻撃をふさがれてしまう。



 「やっぱりダメか。でも、斬撃漆黒波! 斬撃漆黒波!」



 正行は何回も同じ漆黒の斬撃波を放つ。



 カキン



 カキーン



 打つたびに甲高い音が響き渡る。


 正行の攻撃はすべて防がれていた。



 「何度やっても同じですよ」



 「斬撃漆黒波!」



 正行はそれでも同じ攻撃を続ける。



 カキン



 カキーン



 甲高い音が鳴りやまない。



 斬撃は何かにぶつかると大きく爆ぜていた。


 爆ぜた衝撃で周りが徐々に見えなくなっていく。視界が悪くなる。正行からすでに言継は見えていない。



 「何がしたいのですか?」



 しばらくすると、正行の攻撃はやんだ。


 攻撃が止み、視界がよくなっていく。周りが晴れる。


 すると、言継は気づく。



 「……逃げましたか」



 そこに正行はいなかった。


 正行の狙いが達成された瞬間だった──



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