第21話 消失
正行と美緒の戦いが再び始まる。
場所は、赤城山の大沼、赤城神社の前。
近くには多くの鯉が泳いでいる。
赤城神社には不思議なことに観光客は1人もいなかった。摩訶不思議なことである。正行たちはその違変には気づいていない。
そんなことよりも2人は目の前の相手に集中していた。
正行は美緒に、美緒は正行に。
「さあ、勝負だ美緒」
「ええ、正行。受けて立つよ!」
正行は、美緒との距離を一気にゼロにする。
美緒の首もとに刀を当てようとする。もちろん、正行としては本気で美緒の首を斬り落とすつもりはない。首もとで刀を寸止めするつもりであった。
だが、美緒はそのことを読んでいたのか、剣を首もとに置く。
このまま正行の刀が美緒の剣にぶつかったとすれば正行の力が押し殺せずに美緒の剣にあたり、首もとへそのまま刺さるだろう。
それだけは避けなければならない。
正行は、振りかざした刀を無理やり明後日の方向に振りかざす。
そして、距離を美緒から再び取った。
「ちっ」
「流石だね。あの一瞬でそのような判断を取るとは私も思っていなかったよ。妙義団の力しっかりと見せてもらったわ」
「へえ、こんなのが俺達妙義団の力だと思っているのか。美緒の脳は御花畑なのかな、それともバカなのか? 榛名団とはこんな比興で姑息な手しか使えない連中しかいないのか」
美緒の売り言葉に正行は買い言葉で返す。
お互いがお互い相手を、相手の団をののしり合う。みっともない光景でもあるが、お互い今はそんなことを考えている余裕などなかった。
とりあえず、この戦いを終わらせる。それが今の2人の考えであった。自分が勝てればいい。相手を打ち負かす。その気持ちでいる。
「はぁあ」
今度は美緒が力いっぱい攻めてくる。
剣を振りかざす。そして、魔術具の力を発動する。
「火炎斬撃!」
炎をまとった斬撃を美緒は振りかざす。
「お、おおい! 魔術具の能力を人相手に使うなよ!」
正行は文句を言いながら自身も能力を発動させる。
「影の鼓動!」
「き、消えた!」
正行の姿が消える。
美緒は正行のことを見逃していなかった。一瞬たりとも見逃していなかった。なのに、美緒の視界から一瞬にして正行の姿が消えた。
「どこに行ったの?」
「ふふふ、俺の姿が見えるかな?」
正行の声はしている。なのに、姿が見えない。
美緒は、これが正行の魔術具の能力だということは分かった。
姿を消してどこからか闇討ちをする。そんな能力だろうと考えた。
「卑怯よ! 姿を隠して攻撃するなんて!」
「戦いに卑怯もあるか! 俺は戦いを終わらせる。だから、終わりにするぞ!」
終わりにする。正行のその言葉に美緒は身構える。しかし、どこからか攻撃が来るかわからない。
美緒は、身構えて攻撃を防ごうとするも、
「うぅ」
正行が峰打ちを行い、そのまま美緒は気絶する。
「ふぅ」
とりあえず、何とも言えない戦いが終わったのだった。
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