第20話 再戦

 正行は美緒を怒らせた。自らの失態により。その結果、1回誤魔化して終わらせたはずの戦闘が再び起こることとなった。


 正行にとっては痛恨の極みである。



 (あちゃー)



 正行の内心はこうなっていた。


 やべえ、やってしまった。美緒の怒りをどうやれば収まるか。せっかく、榛名団と共闘できていたのに自らの失言によりこんなことになってしまうとは。



「榛名の力よ、古代より噴火し、天に裁きを与えよ、魔術具解放!」



 美緒は、魔術具を発動した。美緒の持っていた剣は魔術具であった。正行が、榛名団に囚われていた時に考えていたことは当たっていた。



 「おいっ! ひと様相手に魔術具を使うとはどういうことだ!」



 魔術具は、本来人間相手には使ってはいけない。異界生物を倒すために使う特別な力である。この魔術具の技術は誰が作ったかは不明である。が、いつからか群馬において出現する異界生物を倒すための力として使われ始めた。



 「知らないわよっ! あなたを倒すためならなんだって使ってやるのっ!」



 正行は、美緒が怒りのあまり我を忘れていることに驚嘆する。


 このままではまずい。何がまずいのか。自分の身がまずい。魔術具に対して効果的なのはもちろん魔術具だ。


 正行は覚悟を決める。美緒と本気で戦う覚悟を。すなわち、自らも魔術具を使うという覚悟を。


 正行は、自身の魔術具であるブレスレットに手をかける。



「覚醒せよ、上毛の山々よ、守護せよ群馬の神々よ我の力この時発動せん魔術具解放!」



 正行の腕にはめられているブレスレットの魔術具。



 そのブレスレットは赤と黒の色で塗られておりブレスレットの上の方にはだるまが描かれていた。正行はそのだるまが描かれている部分に手を当て解放した。



 漆黒の刀。名を義顕。



 「それが、あなたの魔術具なのね。いいわ、相手にとって不足はない!」



 「今からでもいいから、おとなしく負けを認めてくれないか?」



 「負け? 何で負けを認めないといけないの? 私はあなたを倒す。そう決めたのよ。あなたは私を怒らせた。今は、赤城団などどうでもいい。あなたさえを倒せればいい。」



 「赤城団などどうでもいいのか? それ本当か」



 正行は、美緒に問いかける。


 怒りで変なことを言っている。そのような認識を持ってくれればいい。そう思っていたが、無理そうだと正行は察する。



 「赤城団よりも今は俺、か。わかった。そういうなら俺の全力をもって答えることにしよう」



 正行は、戦う覚悟を決める。


 刀を持っている手に力が入る。


 そして、刀を美緒に向ける。



 「さあ、あなたを私も全力で倒すことにするよ!」



 正行と美緒の戦いが開戦する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る