第19話 失言



 赤城山上空で赤城団の本部の入口を探っている正行と美緒の2人。



 「赤城山、広すぎてどうにもならない」



 「それねえ。どうしたものか」



 妙義団の正行。榛名団の美緒。2人とも赤城団とは縁もゆかりもない。そのため、本部の入口がどこにあるのかわからず迷っていた。



 「普通に考えれば大沼か?」



 「赤城神社の周辺が有力よね」



 赤城山には、大沼と呼ばれる沼がある。沼といったが、性格にはカルデラ湖である。赤城山は火山のためできた湖である。大沼の標高は1300mであり、大沼の湖畔には全国にある赤城神社の総本山がある。


 2人は、赤城神社の前に降り立つ。



 「赤城神社に降り立ったが、このあたりにめぼしいものはないしな」



 赤城神社の本殿、横の社殿、そして周りは大沼に囲まれている。ちなみに赤城神社の駐車場の方の水辺には多くの鯉が泳いでいる。



 「赤城神社は有名すぎるから本部を置くところとして違ったのかな」



 美緒は言う。



 「まあ、そうかもしれないな。大沼も周囲は広いしこのあたりのどこかに本部の入口はありそうだ」



 大沼の周囲は広い。4kmある。しかも、周りは森である。その森の中に赤城団の秘密の入口があれば見つけるのは本当に難しい。


 正行と美緒の2人は絶望を覚える。


 こんなの絶対に見つけることができない。せめて赤城神社の近くに本部の秘密の入口があればいいのにと思う。



 「あああーーー、どこなんだよおおおおおお」



 正行は、考えることを諦め叫ぶ。


 横にいた美緒は冷たい目で正行を見る。冷たい目と言うか呆れた目だろうか。



 「入口ぃいいいいいいいいい」



 そんな美緒の様子を知らず正行は叫び続ける。その様子はまるで動物であった。野性的と表現すべきか。少なくとも理性ある人間には思えない。



 「……林君、落ち着きなよ」



 美緒がいい加減落ち着かない正行に対して苦言を申す。



 「……すまん。取り乱した」



 「そうね。ものすごい取り乱していたね」



 美緒は正行が申し訳ないとしょんぼりしているが、美緒はそれをあっさりとスルーする。



 「……なんか、その反応は求めてなかった」



 「そんなの知らないわよ。私に反応を求めるのであったらそれ相応の態度をしっかりとしてほしいわね」



 美緒が正行の扱いに慣れたのかどんどんと傲慢になっていく。もともと傲慢だったのを隠していたが、時間がだいぶたったので慣れたのか。正行にはどうなのかよくわからないが美緒に対して不満が出てきた。



 「……偉そうに」



 ぼそり。


 正行は苛立ちから本音が出てしまった。


 そして、悪いことに美緒にその言葉が聞こえてしまった。



 「偉そうってどういうことよ」



 もちろん美緒は怒った。


 そりゃあそうだ。人に向かって偉そうにと言えば誰だって怒る。



 「ご、ごめん」



 正行は自分の失言に気づきすぐさま謝るも美緒の怒りは収まらなかった。



 「知らない。あなたと私は敵なんだからそもそも何で一緒になって探しているのよ。榛名団の一員として妙義団のあなたを倒すわ」



 1回収まったはずの戦闘が再び始まろうとしていた。



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