第17話 考察



 「一回休戦しよう」



 正行は美緒に対して提案する。


 正行は妙議団と榛名団が対立して戦争しても何にも意味がないと考えていた。そもそも同じ異界生物を倒そうとしている同志であると考えている。そこに縄張りなどがあることはもちろん知っている。でも、一番大事な大局的判断をするのであれば対立などかなり愚かなことであると考えている。



 「休戦ね。それで休戦したということはいずれ戦争は再び始まるということだよ」



 美緒は休戦という言葉の意味を言ってくる。


 休戦をするとなるといずれ戦争は再開する可能性がある。正行は停戦と言わなかったことには理由がある。



 「まあ、停戦したいがどうせそんな気持ちはないだろ。だったら休戦でその場をしのごうと思ったんだが」



 正行は嘘を言わない。素直に自分が休戦しようと言った意味を言う。



 「……まあ、そうだよね。私の停戦しようと言われていたら絶対に無視をしていたね。そこまで考えているのであるならいいよ。私はしばらく休戦してあげる」



 「え? 本当にいいの?」



 正行は美緒がすんなりと休戦の提案に乗ったことに驚く。



 「何で驚くのよ。何となく私も実は今回の事きな臭いって思っていてね。もしかしたら、この戦争には黒幕がいるのかもしれない」



 「黒幕?」



 美緒の推測に驚きを隠せない。



 「ええ、黒幕よ。あまりにもおかしいわ。確かに過去にも団と団との間で対立が起きて戦争になった例があるわ。しかし、それにしても今回はおかしい。何よりも戦争はどっちからふっかけたの?」



 「え? 榛名団から宣戦布告が来たと俺は聞いているぞ」



 正行は、団長の詩織が会議で言っていたことを思い出し言う。



 「そうだよね。そして、私は榛名団の団長からはこう聞いているの。妙義団から宣戦布告がきた、ってね」



 「え? それってどういうことだ」



 正行は訳が分からなくなっていた。


 妙義団は榛名団から宣戦布告が来たと言い、榛名団は妙義団から宣戦布告があったと言っている。お互いの言い分は矛盾している。


 どうして矛盾しているのか。そのことについて正行は分からなかった。



 「つまりだよ。私達両団が宣戦布告をしたという嘘の話を持ってきた人がいるはずなんだよ」



 美緒は言う。


 正行は美緒の考えたことについて自分なりにも考えてみる。



 (両団が宣戦布告をしたとなると嘘をつく人がいる。それはまずどっちかの団に向こうから宣戦布告があったよと言い、その後もう一方の方にも宣戦布告があったと言う。確かにそうであれば俺が矛盾であったと思っていたことは解決する。しかし、そんなことをして得する人物は誰だ。榛名団にも妙義団にもいないはずだ。つまりこの2つの団の関係者ではないということか。じゃあ、誰だ。榛名、妙義……)



 「赤城団、か!」



 「え、えええ、どうしたの? 急に叫んだりして」



 「そうだ、そうだよ。赤城団が裏で手を引いていたんだ。俺らがつぶし合えば一番得をするのは赤城団だ。赤城団が黒幕なんじゃないか?」



 正行が言った赤城団とは榛名団、妙義団とともに群馬県で異界生物を倒すことを専門にしている3つの団の最後の1つだ。赤城団はここ最近成績が落ちていると正行は聞いていた。そこで考えたのが調子のいい2つの団を策略にはめて陥れること。そうに違いないと思った。



 「なるほどね。それは面白い考えだね」



 「まあ、な。でも、あながち嘘には思えない。とりあえずだ。話を聞きに行ってやろうじゃないか」



 「話……まさか赤城団に乗り込む気」



 「ああ、そのまさかだ。俺らの団のメンバーが傷つくのは見たくないんだ。だから、こんな無意味な戦争を止めるぞ」



 「……まったく、私も付いていくわ。榛名と妙義の2つの団から人が来れば何かしらのアクションを向こうは取ってくれるでしょ」



 こうして、正行と美緒の2人は戦争を止めるため赤城団の本部に急いで向かったのだった。

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