3、夜の闇と招かざる客《5》
ぽちゃん、と。
水が跳ねる音がした。
◆◇◆◇◆
あの後。
マリーは浴場に来ていた。
「今日も疲れたな…………」
小さな呟きが漏れる。
ともすれば一瞬で夢の国に旅立ってしまいそうなくらいの疲労を感じながらも、マリーは素早く服を脱ぎ、備え付けられている脱いだ服を籠の中に入れた。
身の回りのことをすべて使用人に任せている貴族令嬢なら、服の着脱など普通は自分ですることはない。
しかし、自分のことは自分でやる、ということを
それにマリーは、身の回りのことをする侍女をほとんど置いていない。侍女の多くが、マリーの母が少女姫であった頃から仕えている古参の信頼できる者ばかりだ。
実は、マリーが再び王宮暮らしを始めた頃、王から侍女を増やさないかとの打診はあった。
しかし、それには丁重にお断りをいれておいた。
それは何故か。
王宮――――それも後宮は、一番不審死が多い所だからだ。
そんなフロシア一危険な場所に、よくも知らない侍女を置くわけにはいかない。
それに、マリーには敵も多い。
だから、いつ何時でも命を狙われているか分からなかった。例えば、今日のように。
そうしているうちにも、準備が整ったマリーは、浴室に足を踏み入れる。
ここにも、もちろん湯浴み係の侍女などいない。すべて自分一人で、やるのだ。
これもまた素早く身体を洗い、髪を洗った後。
マリーは、浴槽に入った。
「気持ちがいい…………」
マリーは、呟いていた。
我知らず、溜息が溢れる。
それは、自分が今、生きていることに対する安堵でもあった。
熱いお湯に浸り、数少ない休息に少しだけまどろみながらも、マリーの頭は忙しなく動いていた。
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