3、夜の闇と招かざる客《4》


「マリー殿下。ご無事でございますか」


ロウソクがポツンと一本、灯っているだけの暗闇から、新たな光がこぼれた。

光源を探ると、先程殺し屋たちが入ってきた扉とは別の扉が開かれている。

手燭を持って立っているだろう数人の人影を認めると、マリーは小さく息を吐いた。


「………………ええ。無事よ」


「それはようございました。では、そちらに向かってもよろしゅうございますか?」


先頭に立つ壮年の女が静かにマリーに問う。


「ええ。入ってもいいわ」


それに、マリーは短く答えると、強張っていた身体の力を抜いた。


(やっと……終わったのね……)


マリーは小さく呟いた。

握りしめていた掌を開く。


マリーは、この瞬間が何よりも待ち遠しくて。それと同時に、何よりも嫌いだった。当たり前だ。人を殺したのだから。


しばらく、マリーはその場で立ち尽くしている。

そうしている間にも、彼らは骸となった男たちを、素早く回収していった。


金縛りにも似た呪縛がやっと解け、身体が動けるようになったとき。

マリーは、部屋の外へ歩き出した。


「私は…………休ませてもらいます。皆、ありがとう。後は…………頼みます」


マリーは、か細い声で言った。彼らを労うために。

それは、いつも黒薔薇姫と影で恐れられている剣姫の声ではなく。

恐怖で震えている少女のものと、同じであった。


マリーは、静かに部屋を去る。

彼らは何も言わずに、主人の後ろ姿に頭を下げたのであった。

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