1、お見合い話は突然に?!≪5≫
「マリー殿下、陛下からのお話はどんなものだ」
早速、
しかし今の私にとって、それはどうでもいい物だった。いや、どうでもいい、と言うのには、少し語弊があるが。
だから。
「それは後からでかまいません」
私はきっぱりと言い放つ。
でも、そんなことであっさりと引き下がる人たちではない。
「そんなこと言ったってなあ…………。そっちの話の方が、重要性が高いのではないか?」と言って、首を傾げる。
「うっ………………そ、それは」
マリーは口ごもった。
確かに…………確かにこっちの話の方が重要性が高いだろう。
だが。
(い、言えない…………。これは絶対に言えない………)
マリーは心の中で、そう思った。
それに――――
「伯父上」
そう。彼は、自分の伯父なのだ。私の母の兄にあたる人である。
だから、余計言いにくい。
「伯父上こそ、お話があると聞きましたが」
こんなお昼の時間に、私を呼び出すぐらいの話だ。きっといい話ではないだろう。だがそんな話ほど、早く聞いておかなければ。
そう思ったマリーは、問いただすように、
「まあまあ、落ち着け落ち着け。それよりもマリ、お前の話が先だ」という伯父に、話を変えられてしまった。
ちなみに『マリ』というのは、家族―――それも本当に親しい人のみが使う、私の愛称だ。正しく書くと、『
今、私と話している李親子も、滅多に使わない。王宮で使うときは、周りに誰もいない時だけ。いくら王太子の外戚でも、彼らは王族ではない。それをよくわかっている李家の人々は、いつもは『殿下』と私を呼ぶのである。
それでも、彼らは事あるごとに私や弟を助けてくれた。
まだ小さかった頃、二年ほど伯父の領地で暮らしたことがある。当時の私と弟は、大した後ろ盾もなく、母の実家だけが頼りだった。そんな私たちを、外祖父(母の父)が亡くなって爵位を継いだばかりの伯父は、優しく自分の領地に迎え入れ、養育してくれたのだ。
その恩もあるからか、私は彼らに対してどこか、強く言えないところがあった。
「で、陛下の話はいったい何だったのだ?」
伯父が聞いてくる。
「それは…………」
私は口ごもった。
いつもなら、すぐに答えられるのに。
今日はなんだかおかしい。私はまだ、そんなに動揺しているのだろうか?
心の中で、自分でもわけが分からない葛藤をしている私の様子に気が付いたのだろう。
「どうした、マリ?そんなに無茶苦茶な話だったのか?」
と心配そうに、
「………ま、まあ、そうね………。確かにそうなんだけど…………」
ダメだ。王の放った爆弾発言を思い出すだけで、顔から火が出そうなくらい、恥ずかしい。マリーはさらに俯いてしまう。
そんな私を見かねた伯父は、
「マリ、早く言いなさい。お前が言ってくれないと、私たちには分からないままだ」と言った。
「はい、そうですね………………。分かりました」
まるで何かの覚悟を決めたかのように、私はしっかりと頷いた。
そして、深く息を吸う。
マリーは再び口を開いた。幼いときから父のように慕ってきた伯父と、兄のように慕ってきた従兄に、このことを伝えるために。
「じ、実は………私に、縁談が、来たんです……………………」
「そうかそうか、お前も大変だな…………………」
「そうだな…………………………ん?」
……………………………。
……………………………? ……………………!? ………………………!!
しばらく妙な沈黙が流れた。その、一拍後。
「「え、ええええェェェェー――――――――!? お、お前に縁談!? ウソだろ――――――――ッ!!」」
次の瞬間。
コトバを理解できた李親子は、文字通りぶっ飛んだのであった。
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