1、お見合い話は突然に?!≪3≫


 ここで、フロシア王宮近衛軍の組織についても見ておく。

 フロシア王国近衛軍大将軍は、王国陸軍総大将と王国海軍総大将に並ぶ、王国の軍部の最高責任者だ。

 王国の建国当時から、これらの役職は『三武のゆう』と呼ばれている。 

 この大将軍を長とする近衛軍には、様々な役職が置かれていた。

 まず、大将軍直属の部下である、将軍三人。別名、『近衛の三華さんか』。

 彼らは、フロシア王宮にある四つの『みや』の警備を、王宮の主である国王から直々に、任されている。そのため、それぞれの宮の別名から、一ノ将軍、ニノ将軍、三ノ将軍と呼ばれていた。

 

 

◆◇◆◇◆

 


 話を元に戻そう。

 今、マリーと龍斗リュートは大将軍の執務室に向かっていた。

 マリーは歩きながら、隣にいる龍斗を見た。

 彼は現在、二十三歳。すらっとした切り目と高い鼻、自分と同じ白い肌が目を引くの美丈夫だ。そして、吸いこまれそうな黒い瞳と、黒い髪が何よりも特徴的だ。

 対する自分も彼同様、この国に多い、赤髪と赤い瞳の持ち主ではない。

 黒い瞳と黒髪、白い肌。

 王族には珍しいぬばたばの髪と黒曜石の瞳、陶器のような白い肌を持つ、『絶世の美女』といわれた母、杏奈アンナ王妃の特徴をマリーは姉弟きょうだいの中でただ一人、そのまま受け継いでいた。

 ちなみに、黒い瞳と髪はフロシア人の中でも、とても珍しい。茶や金茶の髪を持つ者はいても、黒髪の持ち主はある一族除き、いない。それが、母の一族だ。

 たぶん、母の一族はいわゆる少数民族と呼ばれる人たちなのだろう。

 マリーはともかく、龍斗もそんな珍しい髪の色をしているのには理由があるのだが。

 まあ、それは後ほど説明できると思う。


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