第16話 至高神との戦い
洞窟から出たぼくは、大袋を背負い、ソニアを抱きかかえたまま、山を降りて行った。傷が痛む。だが、ソニアはまだ確かに生きているらしく、その肌が温かい。
ソニアは、声も立てず、ぐっすりと眠ってしまったままだ。意識がないというのが正確かもしれない。
このまま、ソニアが死んだらどうしよう。
そう思うと、ぼくは涙が出てきた。
山を降りると、村があった。宿に泊まり、宿代に宝石をひとつ、ぼくは差し出した。
宿のベッドにソニアを寝かせる。
宿屋の親父は、ぼくの差し出した宝石に驚いているようだった。宝石を手にとって触るのが初めてのようだ。
「坊っちゃん、こんな高価なものをいただいても困ります。うちの宿代はもっとずっと安いのです」
「いいんだ。しばらく、この女の子を寝かせておくから。目が覚めるまで、いや、動けるようになるまでずっとここに寝かせておくから、かなり長い時間、ぼくらはこの宿に泊まるはずだ。気にせずにとっておいてくれ」
宿屋の親父は、それを聞くと、大喜びで、家族を呼んだ。
「この旦那さまがうちの上客になってくれるそうだ。我が家の暮らしも楽になるぞ」
と自慢気に話していた。
宿屋の親父には、娘が一人と息子が一人おり、二人とも、ぼくによくなつき、ぼくに礼をもって接し、ソニアの看病を手伝ってくれた。
ぼくは、宝石の入った大袋を盗まれないように常に持ち歩いたが、
「あの坊っちゃんは、すごい大富豪なんだよ」
という噂が村で広まっていった。
ぼくは、貴族の待遇で、村で迎えられたが、ぼくは意識の戻らないソニアが心配で涙を落した。
「いくら、お金があっても、ソニアの傷は治らないんだ」
ぼくは、むなしくて、途方に暮れた。
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