Roy

「今、大人しくしているこのときに討つしかないと思い、騎士団を派遣させた。彼は優秀だったが、戦闘は嫌う人だった。すぐに降参してくれると思ったんだが…。予想は外れたようだ」

「……」

「ところでマリ。きみはロイに脅されていたのかい?」

「いえ。何もされなかったですよ。とても穏やかに過ごせていました…」

「そう、か」


 師匠について何も知らなかっただけに、ずしりと重たいものが落ちてきた。

 年はどちらかというと兄に近い。そんな存在だった。

 今頃、彼はどうなっているのだろうか。

 あの不味い料理を作って、自分の帰りを待っているのだろうか。

 それともまた禁忌を犯しているのだろうか。

 そうなれば一体、


「彼は、殺さなければならないのでしょうか」

「わたしとしては、彼を楽にさせたいと思っている」

「…………では、私が彼を殺します」

「!」

「正気か! お前の師匠だろうっ」

「お心遣い感謝します、殿下。私は、彼に…師匠に聞かなければならないことがあります。私に行かせてください!」

「……」


 一つだけ、理解した頭で2年半抱えていた質問をぶつけてみたいと思った。


「……では明日、急で申し訳ないが、行ってきてくれるか」

「お任せください」


 マリは、立ち上がると二人に一礼し、謁見の間を出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る