第百七話 黄金


 暗闇の中で黄金をつかんだところで、それ自体が輝いていなければ黄金かどうかはわからない。


 黄金に光が当たっていても、それが直接手に取れなければ黄金かどうかはわからない。


 光の下で黄金を手にしても、あなたが黄金を見分けるすべを知らなければ黄金かどうかはわからない。


 輝く黄金を手にし、それが黄金であることを知り得ても、それがあなたのものでなければ黄金を得たことにはならない。


 そして。


 あなたが燦然と輝く黄金を手に入れ、それを高々と掲げて誇っても、黄金があなたを生かすことはできない。


◇ ◇ ◇


 枯草が美しい黄金色に輝いているのを見て、ふと思う。


 私は、あの世に黄金を持って行けた者を一人も知らない。

 だが、美しい黄金を見た記憶はあの世に持っていけるかもなと。



【 了 】

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