第百八話 骨だけの傘

 骨だけの傘を持ち歩いている人がいた。雨を防ぐことも日差しを遮ることもできない、役立たずの傘だ。なぜそんなものを携行しているのか理解に苦しむ。その話を友人にしたら、友人があからさまに渋面を作った。


「なあ、そいつが変な傘を持っていることで、おまえがなにか不利益を被ったのか?」

「いや……単に変だなと思っただけだ」

「それを喧伝するのは、傘の持ち主にではなく、おまえの脳みそに問題があるな」


 むっとして、言い返した。


「なぜ、私がそこまでひどく言われなければならないんだ?」

「俺から見ると、おまえはとことん奇妙なやつだ。俺がそう言ったら、おまえは無条件に自分を変えるか?」

「む……」

「ある行動、言動を見て理解できなかった場合。その原因は、常に見た側にあるのさ。だから、脳みその問題だと言ったんだよ」



【 了 】

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