第四十四話 主従

 かみに立つ者在らば

 それに従ふ者在り


 従者ずさなければ

 あるじと云ふ者も在らず


◇ ◇ ◇


「お主とわしとで、何がどれほどたがう?」

「此の方まで、扶持ふち以外は違いませなんだ」

「ははは。そうじゃな」

「お館様はどうなさるおつもりですか?」

「わしか? 野に下る。この身一つくらい、なんとかなるじゃろうて。ははは」

「そんな無体な……」

「お主こそどうするつもりじゃ? わしはもう何も出来ぬぞ?」

「お館様に付いていきまする」

「お主も物好きじゃのう」

「お館様も手前も無一文になりますゆえ」

「うむ」

「共によろよろと野を行きましょうぞ」

「そうじゃな。さて……発つか」

「はい」

「これ。控えるな。これからはわしの横を歩めよ」



  いずれが主いずれが従の春の旅



【 了 】

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