第四十五話 水心

水が涸れると乞い願われ

水が溢れると嘆き呪われる


水ある限り我々は増え

水が絶えれば我々は滅する


コップ一杯の世界を飲み干したところで

誰も殺戮者とは指弾されないが


大海が人一人溺れさせただけで

無情呼ばわりされる


雨は天の涙などではない

ただの水だ


そのただの水を見て

我々は泣き、笑い、怒り、嘆き

そして黙する


ただの水に心などあるものか

心を潤す水は自分で汲んで来たまえ



【 了 】

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