第四十話 訪問者

 あなたは、誰かをずっと待っています。

 それが誰かは、あなたには分かりません。


 あなたは、誰かに見つけてもらうことを願っています。

 誰かの目に留れば、それでいいと思っています。


 あなたは、運命を信じています。

 誰かに出会えれば、それで自分が変わると信じています。


 あなたはずっとそこにいます。

 それがあなたにとって唯一出来ることだから。


 そして今日。

 突然あなたを訪ねて来た者がありました。


 あなたは心の底から驚きます。

 だって彼は……醜く軽薄で、移り気でなれなれしく、誠意のかけらもない男。


 でも、それがあなたの待ち望んでいた訪問者なのです。


 あなたは嘆きます。

 こんなはずじゃなかった、と。


 でも。

 でもね。


 あなたは小さい。

 あなたは動かない。

 待つだけ。願うだけ。信じるだけ。


 それが……あなたなのですから。


 そしてあなたの望んでいた通り、運命はそこから動き出すのです。



【 了 】

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