第四十一話 有無

わたしたちは


そこに最初からあるものを

 ないないと言い張って

  不平不満をぶちまける

かたや手にしていた眼鏡から

 果ては途方もない幸福まで



わたしたちは


そこに最初からないものを

 あるはずだと思い込んで

  疑念をばら撒く

それは信頼や信用という肩書きだったり

 愛情や友情という張り紙だったり



わたしたちは


そこに最初からあって

 これからもずっとあると信じ込んでいるものを

  全く顧みない

家族も国家も地球さえ

 明日そこにあるとは限らないのに



わたしたちは


そこに最初からなくて

 今後もずっとないと思っているものを

  想像して描き出すことが出来ない

だからそれが現れた時に

 誰一人気付くことが出来ない



わたしたちは


有るものを有ると

 無いものを無いと

  認識することが出来ない

それなのに誰もが

 そんなことは簡単に出来ると思い込んでいる



【 了 】

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