第三話 金魚

 雑踏の合間を すいすいと泳ぐ金魚

 水があれば そこが金魚の居場所だ


 それに引き換え

 人は 空気があってもそこに居られるとは限らない


 しかも 自分を金魚と重ねたところで

 水の中にも空気の中にも わたしの居場所はない


 そのことに 耐え難い息苦しさを覚えて

 人混みの中で ぽこんと息を吐く


 吐息は 泡にならずにどこかに隠れる

 そして わたしを陰から見てる



【 了 】

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