ホシガリさん
あるところに他人の物をなんでも欲しがる、ホシガリさんがおりました。
「それ良いね、可愛いね。私もそういうの欲しいな。」「私が貰ってあげようか?」
と言うのが口癖でした。
貰えないと癇癪を起こし、貰えても当然と言う態度。
そして、誰かに自分のものを上げることは一切ありません。
いつしか、ホシガリさんは誰からも疎ましく思われておりました。
ある日、とても綺麗な鞄をもった老婆を見つけたホシガリさん、いつもように話しかけました。
「おばさん、おばさん、そのバックかわいいね。貰ってあげようか?」
老婆は、一瞬驚いた表情をしましたが、ほっとしたような表情を浮かべて、その綺麗な鞄を前に差し出しました。
『貰っていただけるのでしたら、差し上げます。』
ホシガリさんは、ひったくり様に鞄を受け取ると横柄な態度。
「わかってるじゃない。私が使った方がバックも喜ぶし、当たり前よ。」
老婆は、なぜかお礼を言って立ち去りました。
『ばばぁどけよ。』
後ろから聞こえた若者の声に、ホシガリさんは避けようとしましたが、足がもつて転んでしまいました。
若者は舌打ちをして、ホシガリさんを避けて進んで行きました。
ホシガリさんは、気が付きました。
地面についた自分の手はしわしわ、爪も艶を失っていました。
そうホシガリさんは老婆になっていたのです。
しかも鞄から手が放れなくなりましたとさ。
おしまい
ショートショート 北泉玄 @mochida
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