第5話 嘘つきは泥棒の始まり

インターホンがなるとユウタが玄関先に出て言った。

「お久しぶりです。お姉様」

「ユウタくん、そのふざけた呼び方は何?」

「僕、いや私は大いに真面目ですよ」

「あなた、もしかしてアルベソアね。なぜ、星系派であるあなたが地球に干渉しているの?」

「逆に質問します。なぜ、あなたは私にそのような質問をするのですか」

「星系派はペヘトコン星系を除く他の星系に干渉しないという協定はまだ有効のはずです。ここは太陽系であり……」

「太陽? そこは、ペヘトコン人としてゾールと言うべきです。」

「論点をずらさないで。話を戻します。ここはペヘトコン系ではありません。ですから……」

「ええ、そうです。ここはゾール系です。つまり、ここの時間基準はゾールです。確かに、ペヘトコン年換算では、協定はいまだに有効です。しかし、ゾール年換算では、つい最近失効したことになるのですよ」

「星系派であるあなたが太陽年を採用するとは、あなたにもようやく柔軟な発想ができるようになったのですね」

シベラソアとユウタがよくわからない議論する姿を見て、私はあっけにとられていた。


「ところで、我々は先日、陰性感情防波壁の陰性感情波透過率を負の値にすることに成功しました。それが何を意味するかはお分かりですね」

「ええ、あなたたちは地球人を滅ぼそうとしている。盾で地球人をぶん殴ることによってね」

「お分かりでないようですね。我々は、我々ペヘトコン人守ろうとしている。そして、これはゾール人にとっても良き知らせなのですよ。なぜなら、我々によって、ゾール人は肉体という檻を抜け、我々と同じ純粋な精神的存在となることができるからです。それが達成されたならば、私たちも敬意を表して、ゾールを太陽と呼び、ゾール人を同胞として迎い入れることを誓いましょう」


そう言い終わると、ユウタ……の殻を被ったアルベソアは、部屋のタンスの引き出しから、人形のようなものを取り出した。よく見ると、それは、私が拾い、そして捨てた、あの子の亡骸だった。今度は声も出なかった。すると、シルベソアが立ち上がって、言った。

「この子を使って、防波壁を強化したのね」

「マリさん、あなたは心の中の殻にこもっている。私たちはその殻を利用したのです」

「黙りなさい!」

シルベソアがそう叫ぶと、アルベソアはいきなり銃のようなものを取り出し、シルベソアに向けて撃った。すると、シベラソアは倒れた。そして、アルベソアは手袋のようなものをはめて、ラットが入っていた檻の中に、シルベソアを無言で押し詰めた。


アルベソアがこちらを向くと思うと、私にこう言った。

「はじめまして、マリさん。ユウタ改め、アルベソアと申します。あなたを騙すことになってしまい申し訳ありませんでした。しかし、喜んでください。マリさん、これからあなたの子はペヘトコン神の子に、そして、あなた自身はその母になれるのですよ」

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