第18話構成(プロップのファンクション)
これくらいは誰でも知っているだろうという、プロットとかの話です。ここでは、プロップのファンクションを参考にします。簡略版を挙げます。
まず、ここで使うものは、こういうのにします:
*予備部分*
α 導入の状況
γ 禁止や命令
δ 禁止を破る/命令の実行
あ 予備部分や導入部分の結末
A 加害 / a 欠如
これは、予備部分を受けてのこともありますし、関係なしに何かが
起こることもあります。「欠如」というのは、水でも魔法の何かで
も親でもいいですが、それが無いことがここからの発端になるとい
う感じです。
B 仲介、つなぎの段階
加害/欠如を主人公が知るとかなんとかです。
C 対抗の開始
Bを受けて、では主人公はどうするのかの始まりのところ。
↑ 出立・主人公が家を後にする
D 贈与者の第一機能
主人公が問題を解決するために必要となる何かを得るために、それ
を与えるものからの働きかけを受けるところ。
E 主人公の反応(肯定的もしくは否定的)
Dに対しての主人公の反応です。
F 呪具の贈与・獲得
そして、何らかの形で主人公に、問題を解決するために必要なもの
や方法が与えられます。あるいは主人公が自主的に獲得します。助
手が現われるという場合もあります。
G 探し求める対象のある場所へ、連れて生かれる・送りとどけられる・
案内される
A/aの問題解決のために行く必要があるところへと赴きます。
H 主人公と敵対者とが、直接闘う
A/aをもたらした者と戦うとかです。賭けとかも含みます。
J 主人公に標がつけられる
Hの最中に主人公が傷を負ったり、何か「あ、主人公だ」とわかる
何かをもらったりします。指輪やタオルとかもありです。
I 敵対者に対する勝利
とりあえず主人公は敵に勝利します。
K 発端の不幸・災いか当初の欠如が解消される
Iの結果として、この時点でA/aの問題はひとまず解決します。
↓ 主人公が帰路につく
問題がひとまず解決したので、主人公は帰路につきます。
Pr 主人公が追跡される
逃げのびた敵対者かもしれませんし、関係者かもしれませんし、関
係ないものかもしれまんせんが、追跡されます。あるいは、ここで
また主人公殺害が試みられることもあります。殺害というか、食べ
られるとかいろいろ。とりあえず軽い危機が主人公を襲います。
Rs 主人公は追跡から救われる
主人公は、Prの追跡や危機から逃れます。逃げたり倒したり、いろ
いろ。
O 主人公がそれと気付かれずに、到着する
主人公が帰還したりなどです。ただし、主人公が、目的を達成した
その人だとは、だいたい知られずにです。
L ニセ主人公による不当な要求
Oの理由は、結構「ニセ主人公」が、「俺がやったんだぜ」とか言っ
てたります。
M 難題
主人公が、「いや、本当は俺が!」と言ったりいわなかったり。
「じゃぁ、証明してみろ」とか言われたり言われなかったり。
N 難題を解決する
それを主人公が解決します。このあたりとか、次のQとかで、「J
主人公に標がつけられる」においてつけられた標が役に立ったりと
かもあります。
Q 主人公が発見・認知される
主人公が、本当の主人公だと認められます。
Ex ニセ主人公の正体露見
Qとペアになる感じで、ニセ主人公が何者なのかがわかったり、わ
からなかったり。ともかく偽者だということは判明します。
T 変身
変身となっていますが、いわゆる変身だけでなく、新しい身分や地
位を獲得するとかもあります。ただボロくなった服を着替えるだけ
とかも。
U ニセ主人公、あるいは敵対者が、罰せられる
罰せられたり、罰せられなかったり。ニセ主人公への対応がどうな
るかです。
W 結婚
ロシアの魔法昔話がもとなので結婚となっていますが、結末です。
まぁ、こんな感じということで。
では、ちょっと説明を。
まず「予備部分」ですが、まぁ前振りです。それが「A 加害 / a 欠如」に繋がる場合もあれば、繋がらない場合もあります。
そして「A 加害 / a 欠如」ですが、ここで示されたことが、主人公の直接あるいは間接の目的となります。
それに対しては「H 主人公と敵対者とが、直接闘う」から「K 発端の不幸・災いか当初の欠如が解消される」で、問題は解決されます。それに加えて、「↓ 主人公が帰路につく」とかのあたりで、大団円でもかまいません。「Pr 主人公が追跡される」以降は付加的な内容と考えてもかまいません。
あるいは、「↓ 主人公が帰路につく」の後で、新しい「A 加害 / a 欠如」が発見され、「A 加害 / a 欠如」から「↓ 主人公が帰路につく」までを繰り返すのもありです。
さらには、「D 贈与者の第一機能」からF 呪具の贈与・獲得」だったかな、まぁ、どっかが繰り替えされることもあります。例えば三人兄弟で上の二人が試みて失敗し、三人め(だいたいマヌケとか抜けてるとか)が成功するとかもあります。これについては「三回化」と呼ばれます。三回化、あるいは繰り返しは、他の箇所で起こってもかまいません。
さて、「A 加害 / a 欠如」が提示された時点で、その解消が目的となります。プロップのファンクションは、その目的達成のためのプロットとも言えます。
それに対して「J 主人公に標がつけられる」は、「Q 主人公が発見・認知される」に対しての伏線です。
そんな感じで簡単に考えることもできます。
ですが、「A 加害 / a 欠如」の時点で、「L ニセ主人公による不当な要求」に至るようなニセ者の出現の伏線になるかもしれません。あるいは三人兄弟だという時点で、三回化の伏線と言えるでしょう。
あるいは、「↓ 主人公が帰路につく」の後に、新しい「A 加害 / a 欠如」が提示されたとしましょう。それは、あまりに唐突に示されることもあるでしょうが、それ以前に何かを匂わせることもあるでしょう。
やっと本題だ。
「A 加害 / a 欠如」がテーマに結びつくものだとします。もちろん、そうなのですから、プロットに影響します。それとともに、「A 加害 / a 欠如」の解消がもたらされるという伏線とも言えます。
プロップのファンクションを一重のものとして見れば、話は簡単なのですが、上に書いたように、中にもう一個、あるいはそれ以上のプロップのファンクションが入ることも考えられます。その場合、個々の「A 加害 / a 欠如」からの並びが別物のテーマに結びつくものを持っていてもかまいません。ですが、個々の「A 加害 / a 欠如」の前からの伏線を引き継ぐ場合もあるかと思います。
それで、何を言いたいかというと、テーマと伏線とはどういうものなのかということです。一重のプロップのファンクションの場合でも予備部分からの流れもあるでしょう。多重のプロップのファンクションの場合でも、最初の予備部分か「A 加害 / a 欠如」がもたらした、テーマに結びつくものがずっと続くとか根底にあるとかかもしれません。
これは、「何かが起きたら、それに対応する何かが起きる」のだと言っていいでしょう。このように考えると、実のところテーマと伏線との境界が曖昧になります。さらには出来事の連鎖との境界もですね。
もし、伏線とは、「後で読者を笑いものにする」ものだという認識であれば、こういう話はどうでもいいことになります。「誰々は科学者だ」→「こんなこともあろうかと」だって、その意味では充分な伏線ですから。
ですが、そうはとらえない場合、テーマ、伏線、出来事の連鎖の区別が曖昧になります。範囲が大きければテーマなのか。範囲が狭ければ伏線や出来事の連鎖なのか。そういう簡単な話でもありません。狭い範囲での伏線や、出来事の連鎖においてこそテーマを主張することもあるでしょう。「予備部分」や「A 加害 / a 欠如」こそは、その主張のための伏線になるかもしれません。
というわけで、結論というものはありません。「テーマ」、「伏線」、「出来事の連鎖」というものについて、もちっと考えてみるのも面白いかなということです。
ちなみに、ウラジーミル・プロップは旧ロシアの人です。そのころに、この程度の分析はなされていたわけです。ハリウッド映画も結構これで分析できます。そういう言い方はちょっとズルでもあるのですが。
これを知ることは、守破離の守の前の段階です。離を超えてこそ、そこに作者の色や匂いや味がでるでしょう。
そして、もしこれがあまり知られていないのだとしたら、創作論などで触れられないとしたら、それはこれが前提の前提の前提だからでしょう。
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