第13話

「見たところ高校生かな。身分証は持ってる?」

「そんなの持ってません」

「じゃあ悪いけど、そこの交番まで一緒に来てもらおうか」

「な、なんで!?」

「君、未成年だろう?未成年がこんな時間にウロウロしちゃいけないって法律で決まっていてね。ご両親に連絡して迎えに来てもらうんだよ。それとも、一晩檻の中で寝てく?」

「くっ・・・」

ったく、詩織が怪我したのもこんなことになったのも、みんなあの化け猫のせいだ!

「化け猫はないんじゃない?」

「おまっ!どこに消えてたんだよ!」

「ヤバそうな人来たから姿消しただけ」

「お前ズルいぞ、一人だけ助かろうなんて」

「何を言ってるの、君?」

「おまわりさん、元はと言えばこいつが・・・」

「こいつ?ん~どいつかな?私には見当たらないんだけど?」

「ほら、ここにいるでしょう!」

「もう、言い訳はいいからとにかく来なさい。これ以上抵抗するならたとえ高校生でも容赦しない、公務執行妨害で逮捕するよ!」

「た、逮捕!?」

こうして俺は、近所にある交番へ連れて行かれた。しばらくすると両親が駆けつけて来たんだが、母さんは俺の顔を見るなり泣き出すのかと思いきや、いきなり頬にパンチを喰らわせてくれた。なおも殴りかかろうとする母さんを親父とおまわりさんが宥め、なんとか修羅場は終結した。

「さてと、鷲崎・・・郁彦くんでいいのかな」

「・・・はい」

「まず聞きたいんだけど、あんな時間に誰と何をしていたんだね?」

「・・・・・・」

「こら郁彦、ちゃんと答えなさい!」

「痛っ!」

「お母さんも少し落ち着いて・・・」

「本当に申し訳ありません。普段はこんな反抗的なことする子じゃないんです」

「なぁ郁彦。ちゃんとおまわりさんに事情説明して、なっ?じゃないといつまでも帰れないよ」

「・・・どうせ言ったって信じてもらえないし」

「こら!信じるか信じないかなんて、言ってみなきゃわからないでしょ!さっさと話しなさい!」

「まぁまぁ、お母さん・・・なぁ、郁彦くん。私があの公園を通りかかった時、きみは誰かと話していたよね。番組がどうとか説明がつかないとか。私にはきみしか見えなかったけど、きみには誰かが見えていた。そうだね?」

「ま、まさか!そんなことあるわけないじゃないですか!」

「じゃあ何かい?きみは誰もいない公園で、独り言を怒鳴っていたというのかい?」

「だ、だからあれは・・・」

三人の大人に囲まれて、俺はもう言い訳の言葉すら思いつかなかった。その時、かすかな声で呟く猫の声が聞こえた。

「劇の練習してたことにしなさいよ」

「げ、劇の練習してたんだ!」

「劇?あんた演劇部じゃないじゃない」

「あ、あの、一人怪我で出られなくなったから助けてくれって部長に頼まれてさ、あはは・・・」

「どうも怪しい・・・」

「いや、お母さん。郁彦くんの言ってることは本当です」

「・・・は?」

「郁彦くんは噓をつくようなこではありません」

「はぁ・・・」

「これで事実確認も出来ましたし、もうお引取りになられて結構ですよ」

余りの急展開に俺はついていけずにいた。あっ、もしかしたら・・・

「おい、お前の仕業か?」

俺は小声で猫に訪ねた。

「後でね」

そう言うと猫はふわりと消えた。

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ミルキー・ウェイ~仔猫と郁彦と私〜 あずみじゅん @monokaki-ya

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