第12話酢竹と酒竹
酒の楽園に来て一夜明けた早朝、俺は一人で酒の楽園を散歩していた。
昨夜のメランの言葉、自分達と共に古代の酒を復活させないかと誘われた件だ。
確かにそれは魅力的である、酒造魔法の使い手である自分が古代酒に関わる研究をするのは魔法貴族としての誉れと言えるだろう。
だがそれは自分の所属する国家でならの話だ、古代酒復興を使命とする組織『ジャーキー』は国家に属していないアウトロー集団、そこに所属するには問題があった。
結婚する前ならば良かった、独身で爵位の無い頃なら非正規組織の中で活動してもそれほど問題は無い。
言ってみれば金持ちの放蕩息子の道楽だからだ。
だが今は違う、名誉とは言え正規貴族になり、しかも結婚してアルフレイム家に婿入りした俺には貴族として国家に貢献する義務がある、義務を果たすからこそ貴族なのだ。
アルフレイム家は宮廷魔術師筆頭である義爺さんがいる、家名を汚しかねない事は出来ない。
「どうしたもんか」
興味はあるが積極的に関わるわけにもいかない、国家に仕える貴族の辛い所である。
そう言う訳で気分転換に散歩に出たわけだが……そこら中が酒に囲まれたこの里で酒以外の気分転換を見つけるのは不可能だった。
と思ったら
「お? 何だアレ?」
視界の先に見えたのは緑の植物、だがそれは自分の良く知っている気ではなく全身が緑色に覆われた植物だった。
しいて言うなら草の様だが大きさといい硬さと言い明らかに草ではなかった。
触ってみるとしっとりとしていて冷たい、濡れているのだろうか?
「何だコリャ?」
「それは酢竹だよ」
「え?」
後ろから声を掛けられた事に驚いた俺が後ろを向くと、そこには事の張本人であるメランがいた。
「ど、どうも、お早うございます」
「やぁ、お早う。 アーク君は酢竹に興味があるのかい?」
「酢竹ですか?」
「そう、コレは竹と言う植物の一種でね、見た目の通りとても硬くて柔軟性に溢れた植物なんだ。
その性質上様々な素材として活用されていてね、例えば細い竹は本体部の竿を切り出して、吊り竿として使ったり太い竹は茎を切って水筒にするんだ」
「茎を切って水筒ですか?」
不思議な単語だ、普通木を水筒に加工するなら木を掘るって言うんじゃないのか?
オレの疑問が面白かったのかメランは笑って酢竹を掴む。
「見ててごらん、ハイドロカッター」
メランの魔法で瞬く間に酢竹が切れる、そして切られた酢竹から大量の水があふれ出てきた。
「竹の中はね、普通の木と違って節状になっていて中を密封しているんだよ、そしてこの酢竹は本来空洞になっているはずの節の中に酢が詰まっているんだ」
「酢? 酢ってあのすっぱい酢ですか?」
「そう、その酢。舐めてごらん」
メランに勧められるままに節に残った液体を舐める。
確かに酢の味だった。
「酢が出来る植物ですか、コレは珍しいですね」
しかも結構美味い、コレは良い酢だ。
「そうだろう、ウチの酢竹は名産として売られている良い竹なんだ、でも知っていたかい?
この酢竹は元々酒竹と呼ばれ酒を作る竹だったんだ」
「酒竹……ですか?……」
オレの言葉にうなずくとメランは演劇のように両手を広げながら酢竹の物語を語り始める。
「そう、この酢竹はかつて酒竹と呼ばれ人々に愛されてきた、だが765年前のクイラの大流行によって殆どの酒竹は枯れてしまったのだ、こうして酒竹はこの世界から失われてしまった」
心底悲しそうに語るメラン。
「だが! その時不思議なことが起こった。酒竹の中から酒の代わりに酢を作る竹が現れたのだよ!」
バッと両腕を広げくるくると回りだすメラン、何このミュージカル。
「いかなる出来事が起きたのか分からないが酒竹は酢竹として蘇り、ついには酒竹に取って代わる存在になってしまったのだよ」
不思議なこともあるもんだ。
だが俺はメランの話よりも気になることが出来た。
それは酢だ、メランは先ほど竹は中が管になっていて密閉されていると言っていた。
密閉空間で作られた酒がどうしてクイラによって枯れてしまったのだろうか?
過去にクイラが流行した時、密封状態にあった酒はクイラの感染を免れていた。
そしてどうやって酒が酢になったのか?クイラに負けない為に中身が酢になったと言うのは生存の為の進化と言えば、まぁなんとか分からないでもないがその過程が謎だ。
これは調べてみたほうが良さそうだ。
◆
俺はすぐさま宿に取って返し眠っていたシエラに頼んで転移魔法でアルフレイムの屋敷に戻って貰った。
「ふぁぁ、それで、どうしたんだ一体?」
起き抜けに頼んだのでシエラはまだ眠そうだ。
「ちょっと気になることが出来たんで知り合いに調べて貰おうと思ってさ」
「ふむ・・・・・・」
「ああ、長くなるから寝ててもいいぞ」
「そうする……」
シエラをベッドに寝かしつけた俺は街に出る。
行き先は二つ、まずは図書館だ。
このアルフレイム領には図書館がある。実は図書館の有る街は珍しい、この街の図書館は宮廷魔導師筆頭であるシエラの義爺さんが出資して作ったそうだ。
豊かな知識は人の生活を豊かにすると言う義爺さんの言葉に従い、図書館は万人に解放されている。
なお許可を得ずに本を外に持ち出した者は本に込められた盗難防止魔法によって割としゃれにならない報復を受ける。
図書館に入った俺は迷わず目的の本がある場所に向かう。
調べたいことは一つ、酢の作り方だ、酒竹がいかにして酢竹になったのか?
その為には酢が作られる仕組みを知る必要がある。
料理コーナー、そこに酢についての知識が書かれた本があった。
其処に書かれている事によると酢と言うのは元々酒から出来るモノで酒に酢酸菌と呼ばれる極小の生物が混ざる事で酢になってしまうそうだ。
この酢酸菌というのは肉眼で見る事が出来ないほど小さく、顕微魔法を使ってようやく見る事が出来るほど小さい生物らしい。
顕微魔法とは目に見えないほど小さなモノを見るための魔法で医者や学者が好んで覚える魔法だ。
つまり酢竹とは酒竹の中に酢酸菌が出来上がって生まれた竹と言うわけだ、正しくは酒竹の酒を酢にしているというほうが正しいのだろうか?
だが一体どうやって密室のはずの竹の節の中に酢酸菌が入ったのだろうか?
その謎を調べるために俺はある人物に協力を願う事にした。
次に行くのは魔導伝信機センターだ、魔導伝信機とは遠方にいる人間とリアルタイムで会話が出来る魔法を魔法具を使って誰でも使えるようにしたものだ、これから連絡する人物はここからでは少々遠い土地に済んでいる為魔導伝信機を使って話をする必要があった。
屋敷から出て5分ほど歩いた先にその施設はあった。
「ようこそ魔導伝信機センターへ、ご用件をどうぞ」
カウンターの受付嬢が応対を始める、午後からは混むが朝一番なので待ち時間が短くて良かった。
「個室の映像付き通信で長時間通話サービスを頼みたい」
「お客様、個室、映像付き、長時間通話はお値段が掛かりますが宜しいでしょうか?」
「構わない」
「長時間通話は前払いとなっております、お時間をご指定ください」
「コイツで2時間」
俺が取り出した黒いカードを見た受付嬢の目の色が変わる。
「し、少々お待ちください、ただいま確認いたします」
受付嬢がぎこちない動作でカードが本物か確認を始める、それもそのはず、このカードはブラックカード、魔導伝信機サービスの上位会員だけが所有している身分証明書なのだ。
魔導伝信機サービス、会費を払うことで様々な特典を得ることが出来るサービスで商家がよく利用している。
そしてこのブラックカード、このカードを見せれば各種上位サービスや順番の割り込みまで可能だ、その中には一般客が使用できないサービスも含まれる。先ほどたのんだ長時間などのオプションが全てそうだ、アレを普通に頼んだら相当な金がかかる、だがブラックカードならかなり割引されるので普通に使うことが出来る、それでも通常の会話のみの通信よりも何倍もお高いが。
魔法書の取引や翻訳を行なっていると遠方の客から秘密裏に取引を頼まれることもある、そんな時により迅速な対応をする為、知人の紹介もあって魔導通信機の上位会員サービスの契約をしたのだ、正直相当な出費だったがそのお陰で以前の数倍の取引をするようになり、結果契約前より多くの財産を作る事に成功してしまった。
「確認が出来ました。会員様用の個室にご案内させて頂きます」
ギクシャクしながら受付嬢が個室に案内してくれる。
実家の魔導通信機センターでは何度も利用していたから店員も慣れていたけどこの街でサービスを使うのは初めてだからなぁ、店員が慣れるまで時間が掛かりそうだ。
「こちらが会員様用の個室になります、こちらのお部屋は……」
「ああ、知っているからいいよ」
説明を始めようとした受付嬢を制してカウンターに返す。
会員用個室は何度も使っているので今更説明を聞くまでも無い。
部屋の中は意外に広い、5m四方の広さを持つ個室はシンプルでテーブルとソファ、それに映像水晶板、後はサービスのドリンクサーバーだ。
ドアにカギをかけソファに座る、ドリンクはアイスティーにしよう。
テーブルの上に置かれた魔導伝信機には11個のボタンが付いている、それぞれのボタンにはマークが付いておりソレを特定の順番に押していくことで遠方の伝信機センターに通信する事が出来るのだ。
俺は懐から手帳を出してそこに書かれた番号を魔導伝信機に入力していく。
最後のボタンを入力したら通信ボタンを押す、すると単調でリズミカルな音が鳴り出す。
10秒ほど経つと正面の映像水晶版に人の姿が映し出される。
先ほどの受付譲と同じ衣装を着た女性だ。
「こちらはターポズの街所属の伝信機センターです、通信をご希望のお客様のお名前とご住所をお教えください」
「トフポー子爵に取次ぎを頼む、アーク=テッカマー=ローカリットといえば伝わる」
「承知いたしました、今しばらくお待ちください」
そこで一度映像が消え伝信機が停止する。
今から向こうの街の職員がトフポー子爵の屋敷まで通信の連絡をしに向かうのだ、そして連絡を受けたトフポー子爵が伝信機センターにやって来て通信を行なう、サービスのドリンクはその為の時間潰しの品な訳だ。なお一般客の場合は返信待ちの席で職員に呼ばれるまで待つ事になる、勿論ドリンクは無いし何時相手が来るか分からない。
その為庶民はメッセージだけを職員に頼んで伝えて貰い、会話をする事はよほどの用事がある時ぐらいだ。つまり庶民にとって伝信機とは通信のための装置では無く手紙よりも早く用件を伝えることの出来る手段なのだ。
そんな事情もあって返信があるのはまだまだ先だろうから朝食を兼ねて軽食サービスを頼もうとしていた、だが予想外にも直ぐに映像水晶板は光を灯した。
「やぁ!アークじゃないか!!、はっはっはっ!!久しぶりだなぁ!どうしたんだ?」
やたらと恰幅の良い禿げた頭の初老男性の姿が映し出された、この人物がトフポー=ハーラシオ=チープン子爵だ。
「お久しぶりです、トフポー子爵」
「どうだ! 魔法は覚えれたか? 平民落ちしたのならウチで雇ってやるぞ!」
イキナリ不吉な事を言ってくる、こんな感じで軽い男だがコレで世話好きな人物なのだ。
彼と知り合ったのもそうした『世話』に関する事だった、彼の家臣である騎士爵家の跡取りが魔法を覚えることが出来なくて困っていた時に、噂を頼りに俺に魔法書の翻訳の仕事を依頼して来たのだ。
以来彼の『世話』に協力する形で取引を行なっている。
実は魔導伝信機の上級会員に付いて紹介してくれたのも彼なのだ。
彼の紹介があったからこそ魔法を覚えていなかった当時の俺が上級会員になれたのである。
「おかげ様で無事覚えることが出来ましたよ」
「ほう、それはめでたい!どんな魔法だ?」
我が事のように喜ぶトフポー子爵、彼が人好きと言われる由縁である。
「酒造魔法です、魔法で酒を作れるようになりました」
「ほほう、製造系か、それは珍しい」
彼の言うとおり、実は製造系の魔法の使い手は少なかったりする。
理由は不明だが製造系魔法は通常の魔法に比べて術者との相性が重要視される。
その代わりに製造系魔法は通常の製造法に比べて精度が高く優秀な品が作れることでも有名だ。
もっともその所為でその仕事の専門家に嫌われる事もあるのが玉に瑕だ、オレの時もギルガメス酒蔵ではひと悶着あったからな。
「それと事後報告ですが結婚しました。いまはアーク=テッカマー=アルフレイムです」
「アルフレイム!? 『無敵』のアルフレイムか!?」
トフポー子爵が驚く、どうやら義爺さんの勇名は遠い異国にも轟いているらしい。
「はい、そのアルフレイムです」
「は、ははははははっ!! そうかそうか、あのアルフレイムの人間と結婚したのか。そりゃあめでたい。
まぁ、私としては是非見合い相手を紹介したかったのだがな」
「はははは、そういえば随分と早くお出になられましたが伝信機センターに御用でもありましたか?」
普通伝信機センターから連絡を受けて通話するには2、30分くらいかかるものだ、それがこんなに早いということは近くにいた以外考えられない。
「いやいや、違うぞ、買ったんだよ、個人用の伝信機をな」
「な!?」
とんでもない事を言い出した、個人用の伝信機なんて相当の大金持ちでも所有は困難だ。
それと言うのも伝信機の開発元が伝信機本体の情報が外に漏れるのを相当に嫌っているからだ。
誰だって唯一無二の発明品の利益を独占したいものだ。
だから秘密裏に伝信機をどうにでも出来る個人宅に置く事はよほどの事が無い限り不可能なのだ。
「まぁ、私の人望と言う奴だな」
要はコネか、恐らく過去に世話をした関係でコネが出来たのだろう。
だがズルくは無い、貴族として人脈を作りそれを利用して上手く生きるのは当然のことだ。
俺もこれからそのコネを活用するのだから。
「なるほど、さすがですね。所で、トフポー子爵に折り入って頼みたい事があるのですが」
「ほう、アークが私に頼み事かね。ふむ、君には魔法書の斡旋をして貰っているからね。良かろう、言ってみなさい」
俺が頼むのが珍しかったのか快く許可をくれるトフポー子爵。
「酢竹と言う植物をご存知ですか?」
「ああ、知っているぞ、酒竹の突然変異だな。ああつまり酒竹に関する質問か」
さすが話が早い、見た目からはそう見えないが彼は植物を専攻する学者なのである。
その道では結構な有名人らしく大きな成果も挙げているそうだ。
ついでに言うと魔導伝信機の開発者の一人とかなり懇意にしているらしい。
コネを大切にする人物なので相当な影響力の持ち主でもある。
コネを繋ぐべき人物を見極める目が異様に優れているといわれている程だ。
っと、脱線したな。
「酒竹が酢竹になった理由を探しているのですが何かご存知ありませんか?」
「すまんが力になれんな、酢竹はこちらの気候に合わないのか自生していないんだ、私としても一度酢竹は調べてみたいと思っているんだが」
ああ、生えてないんじゃ仕方ないな、じゃあ、切り口を変えるか。
「酒竹はクイラから逃れるために節の中の酒を酢にしました、コレは酢酸菌を体内に取り込んだからです、ですがここで気になる事が出来ました」
「ふむ、なんだね?」
「竹の節は密封空間です、どうやってクイラや酢酸菌が入り込んだのでしょうか?」
「なるほど、確かに」
トフポー子爵の目が輝く、植物を愛する余り植物に関わる仕事を己の使命とした彼にとってオレの疑問は非常に魅力的な謎に映ったようだ。
さらに言えば植物の歴史の謎を解くチャンスだ、そこに浪漫を感じずにいられるほど彼は聖人では無い。
「まずは竹と言う植物に対する知識を得る必要があります。必要ならば酢竹を転移装置でそちらに送りましょうか?」
「そうだな、サンプルは是非欲しい、頼めるか?」
「では後ほどサンプルをお送りいたします」
「受け取ったサンプルの解析が終了したら、こちらから連絡するので数日待っていてもらえるか?」
「分かりました、宜しくお願いします」
通信を終えた俺はアルフレイムの屋敷に戻る、酒の楽園に戻るためだ。
◆
屋敷に戻ってきたがシエラはまだ眠っていた。
幸い酒の楽園に行く方法は分かっているのでテーブルに書置きを残して一人で酒の楽園に向かう。
「やぁ、アーク君、奥方は一緒じゃないのかい?」
酒の楽園に戻って酢竹の竹林に向かっていた所で偶然メランと出会う。
「妻は朝が弱いのでまだ寝ています。それはそうと丁度良かった、メランさん酢竹を数本根ごと譲って欲しいのですが」
「酢竹を? それは構わないが」
メランさんに頼んで酢竹の手入れをする職人を呼んで貰い根っこごと掘り返してもらう。
ほしいのはまだ若い竹と十分に育った竹だ、コレは成長の過程を確認したいというトフポー子爵からの要望だ。
ちなみに竹は地下茎で生息域を増やす植物なので根を途中で切って貰ったのだが、そしたら根から溢れるほど水がこぼれ落ちて驚いた、こんなふうに根から水が出る植物なんて聞いた事が無い。
もしかしてコレも酢竹の秘密なんだろうか? 後でトフポー子爵に報告しよう。
「掘り出しまで手伝って貰ってすみません、あとコレ少ないですが酢竹の代金です」
「一本や二本位かまわないよ、定期的に手入れをしないと地すべりが起きたり周囲の木に光が当たらなくなって困るからね」
酢竹はここの名産品らしいのでしかるべき金額をメランさんに渡して礼を言う。
お互い貴族の面子というモノがあるのでメランさんは素直に受け取ってくれる、こういう時は相場より少し高めに支払うのが貴族のマナーだ。
金を多く落として市場を潤わせるのと裕福な貴族であると周囲にアピールする為だ。
受け取った酢竹を持って返ろうとした時、俺はある大事な事に気付き宿に帰ろうとするメランさんを慌てて引き止める。
「どうしたんだい? まだ何か用事でも?」
「いや、実はですね」
「うん?」
「ここからどうすれば家に帰れるんですか?」
「あー」
◆
さっきはシエラの転移魔法で送ってもらったので良かったが今は居ない。
なのでメランさんに帰り方を教えて貰う必要があったのだ。
「ここだよ」
メランさんに連れられやって来たのは宿の裏手だった。
そこには大きな円盤上の石の塊が埋まっていた。
円盤は直径10mはあり、周囲には黒い石の柱が5本、等間隔で並んでいる。
「これが帰還装置、装置の中央で空の酒瓶を持ってこう叫ぶんだ」
メランさんは声高に叫ぶ。
「カーちゃんが怒るからそろそろ帰るわ」
「・・・・・・」
コレを考えた奴は本物の馬鹿なんだな。
従業員さんから空の酒瓶をもらって装置の中央に立つ。
酒の楽園から帰って来た人達が持っていた酒瓶の正体はコレであったか。
「カーちゃ……」
「アークくん!!」
オレの声を遮るようにメランさんが声を張り上げる。
「え? な、何ですか?」
「大事な事を忘れていた」
何だろう?もしかして組織の勧誘の事かな?
「アーク君」
まずいな、まだ決めかねているんだが、次回に遅らせて貰えないだろうか?
「宿代、払って貰ってないよ」
ちゃんと払って帰りました。
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