第1話「パラレルワールド!?」15

 その後レイセスと合流し、昴は恐らく玄関――としか頭に浮かばなかった――に向かって歩かされているみたいだ。

レイセスが歩く先々で使用人や甲冑を着た男、長いパーカーのようなもの――これまた昴の知識には無かった――を着込んだ老人などが丁寧に、深々と挨拶をしていく。

これを見た昴は改めてレイセスの階級の高さに気付かされたが、ここで態度を変える訳にはいかない。同じ目線で接していくと決めたからだ。昴自身がどう思われているかなどはあまり気にしない。


「それにしても、やっぱりすげえよなあ……」


「何がですか?」


「いや、俺には価値とかわかんねえけどさ、絵だとかあそこに飾られてる剣だとか鎧だとか宝石だとかあれもこれも……挙げたらキリがないけど絶対高いんじゃね?」


 一緒に歩いていたレイセスとリリアが怪訝な顔でお互いを見て首を傾げる。そんなに不思議なことを言っただろうか、と少し不安になる昴。


「私も正確なお値段はわかりませんが、歴史はある物だと聞いておりますよ」


「歴史ってのはどんくらいの?」


「噂では数百年とか!」


「……きっと触ったら大変なことになるんだろうな。大丈夫だ触らないよ」


 二人から説明を受けて、下手に触らないでおこうと心に決めた瞬間だった。少しでも触れようものなら恐ろしい結末が待っている事であろう。


「さ、そろそろ付きますよ」


 かなりの距離を移動し、ようやく玄関らしき場所に到達。ここでも昴は何度か驚く事に。


「扉……デカいなぁ……」


 扉に関してはもう驚かないつもりでいたが、ここのは他のどこのものよりも巨大で重みがありそうだ。女王の間のような豪華な装飾はほとんど無く、大きな鋼の板をくり抜いて作ったと表現するのが相応しい。防御面に優れているのだろうか。


「こんなのどうやって開けるんだ……?」


「まあまあ、見ていてくださいスバル様!」


「開門お願いしますね、皆さん」


「お任せを! 全員配置に付けぇい!」


 レイセスの一言で即座に数人の屈強そうな男たちが駆け足で集合。扉の両側に別れ、ぶら下がっていた長い鎖を掴んで――


「え、まさか引くの……? なんつー原始的な……」


「開門ー!」


 ――こめかみに青筋を浮かべながら綱引きのごとく引っ張った。怒号のように力強く叫ぶと、伸びていた鎖がここぞとばかりにピンと張る。頭上に取り付けられていた滑車が回転し、ゆっくりと、だが確実に扉へとそのエネルギーが伝達されていく。


「こいつは、凄い……!」


 たった数人で巨大な扉が開いていくことにもだが、その先に広がる風景にも感動を覚えた昴。


「そういえば外を見るのはこれが初めてでしたね! どうです? ここの景色は!」


「―――――」


 空は高く、視界一杯に青が広がり、目が届く範囲ではこの場所以外の建造物の姿は一切見当たらず、その代わりに木々がこれでもかと茂っていた。

一言で表現するのならば、綺麗。それに尽きる。 これ以上の言葉など不要だろう。


「それでは、行きましょうか。スバル」


「――ああ……そうだな。遅刻はマズいだろうし」


「いってらっしゃいませ! お二方! お気を付けてー!」


 そうして、昴は初めて城外へと踏み出した。新たな居場所への期待に胸を弾ませて。



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