第30話 はしやすめの咄、参
なんということじゃ! 三十話まで続いてしもうたぞ。こんな下ネタ絶対長続きせんだろうと思っていた皆様は驚いたことじゃろう。でも、一番驚いたのはわしじゃよ。
ここいらでまた、イックーさんを休ませてやろう。イキすぎてTHE ED……いや、ENDになってしまうといかんからのう。
さて此度のはしやすめ、どんな咄にいたそうかと、かなり悩んだ。
キャバクラ時代の咄はどうじゃろうか?
やはり魅力のある英傑といえば、源頼
それとも、神代の頃の咄がよいか?
八人の女子にいちどきに手を出した許しがたきホスト、八股のOROCHIをドンペリで酔わせて退治したという、イク
……と、そこまで考えて、ふと思い至った。
わしの咄をしておらんのではないか?
いかんいかん、ここまで読んで下さった皆さまに、自己紹介もまだだったとは、これは失礼極まりないことじゃ。
よし、ここはひとつ、わしの咄をいたそう。
まずはアンッコク寺の和尚さまこと、
それから他寺での修行を経て、男根寺の
愛別離苦のさだめよな。
イックーさんはこの別れをひどく哀しみ、一度は射精自殺を図ったほどだったそうな。しかしどうにか思いとどまると、やがてはさらなる悟道を求めて、美輪湖のほとりに建つ庵の戸を叩いたのじゃ。
その庵の庵主こそが、
わしは初めは門を固く閉ざし、イックーさんを拒絶した。禅門をくぐるということは、そうたやすいものではないからのう。棒で頬をペシペシと叩いたり、顔にぶっかけたりもした。だがイックーさんは門前に座し続け、決して諦めなかった。六日も過ぎた頃、わしは根負けし、イックーさんの弟子入りを許可したのじゃ。
つまりわしは、イックーさんの師の一人だったというわけじゃよ。
……さて、ここまで咄をしてきて、皆さまには一つ疑問があるのではないか?
夢漏町時代の者が、なぜ現代まで生きているのか。とっくに死んでいるはずではないのか。なぜこんな物語を書いておるのか……とな。
しかし、その辺りの咄は少々ややこしいうえに、本筋から外れるゆえ、またの機会にさせていただこう。なぜならば、このお咄は、イックーさんのお咄ゆえに。
わしの弟子になったとき、イックーさんは二十歳をいくらか過ぎておった。今の世ならばまだまだ若者であるといえようが、夢漏町ではもういっぱしの大人じゃ。
少年老いやすく、固くなり難し。
皆さまもたまには、過ぎゆくときに思いを馳せてみなされや。何かを始めるに遅いということはないが、同時にまた、時間というものは限りあるものじゃ。大切になさるとよい。
それでは次回からはまた、イックーさんがイキまくる咄を書きますゆえ、気長にお待ちくだされや……
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