世界は「」で溢れている

世界は「」で溢れている──では、この「」の中の文字を埋めてみてほしい。

まあなんとなく察したろうから答え合わせ。模範解答は「愛」だ。


唐突にどうしたって、いやね、大したことはないよ。ほら、駅によくいるだろう? 場所を弁えないでいちゃいちゃしくさるバカップル。あれあれ、アレを見ていてつい、ね。リア充は爆発四散しろ、いや冗談。

さておこう、まあくだらない独り語りの今日のテーマは愛。多分そうなるはず。保障はしないよ、だっておれだからね。

ではありきたりで使い古されたフレーズをお借りして、改めよう。

──話を、しよう。愛の定義について、人と愛の関係について、いつも通り筋の通らない身勝手な理論を広げて魅せよう。

愛とは何か。様々な解釈がある。定義づけるならばそれは「生かす為の感情」と言ったところか。いや、殺すことで愛情を確かめる輩も居るには居るがそれはそれ、そういう異常者の話は他所でしておくれ。

愛は生かすもの。そう。仮にそう定義づけしよう。

人間誰しも、愛されていないものも愛していないものもいない。誰にも愛されていないならそいつは死んでいるか近々死ぬだろう。それに愛するなんて、言葉にすると仰々しいが実際は呼吸よりも簡単にしていることだ。なにせ、愛は理性でなくて本能だからね。

詰まる所、なんだ、愛とは酸素の様なものである。なければ人間は生きられない。呼吸ができない。そういうものだ。

愛は惜しみなく、生かす為にある。ただそうだな、薬も転じて毒になる。愛は簡単に人を殺す。

愛は人を生かす薬だが、人を狂わせる劇薬だということを覚えておくといい。

人を愛するが故に狂ってしまう人間の話というのは、悲劇によくあるパターンだろう? そうだな、ギリシャ神話のメーデイアとかその辺りに始まるかもしれんな。愛は人を狂わせる。それが純粋で深く大きなものであるほどに。

人を殺したいほど愛おしいと思ったことはおれにはない。父母の温い愛に包まれて、それなりのものをおれも多分返して、そうして生きている。

だがまあ、世の中にはそういう矛盾が数多ある。殺したくなるほど愛おしいとか、考えてみればとんだ矛盾だが──おっと、これ以上はいけないな。自分で自分の首を絞めるようなものかもしれないからな。いや、おれではなく、何処かの誰かにとっては。


さて、長々と語ったが結論というか、簡単に纏めればつまり、「愛とは酸素の様なものである」。なければ人は生きられないが、多すぎては人を殺してしまう。

若人諸君、忙しなく愛を語るのはよいが、用法・用量をしっかり守る事だ。

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