楽しみをひとりで作り出せなくなった人へ
おはようございます、埴輪です!
先日、『鉄腕アトム』を読み返していると、はっとするやり取りに出会いましたので、ご紹介したいと思います!
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「娯楽ゾーンってなんです」
「世の中の楽しみがなんでもあるところ」
「楽しみなんて自分でかってに作るんでしょ」
「そうよ。だけど今は合理生活が進んじゃってひとりで作り出せなくなったの」
※手塚治虫『鉄腕アトム⑦』、秋田書店、1999、30頁
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──そう、楽しみなんて自分でかってに作るものだったはずなのに、今や与えられるものとなっているのではないかと、思わずにはいられません。
私が好きな「ゲーム」なんて、その代表格ではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、長年ゲームを遊んできた私は、ゲームは自分で楽しみを見出すものであると、胸を張って言うことができます。
たとえば、『スーパーマリオブラザーズ』。
これは用意されたステージをクリアしていく遊びで、敵にぶつかってはいけない、キノコを取ると大きくなる、ジャンプで穴を飛び越えられるなど、様々なルールが用意されていますが、実際にマリオをどう操作するのか、また、ステージをどうクリアしていくのかは、プレイヤーの裁量に委ねられています。
もちろん、こうすると早くクリアできる、安全にクリアできるという攻略法は存在しますが、その通りにする必要はなく、非効率なプレイ内容であっても……全てのブロックを破壊するなど……制限時間内にゴールすれば、クリアとなります。
『スーパーマリオブラザーズ』に限らず、『ドラゴンクエスト』にしろ『ファイナルファンタジー』にしろ、ゲームはあくまでルールを提供するもので、その遊び方(楽しみ)はプレイヤー次第だからこそ、人気の娯楽になったのだと思います。
──ところが、昨今のゲームは、遊び方までも提供しなくてはならないと言いますか、それが他でもない、プレイヤーから求められているように感じています。
『スーパーマリオブラザーズ』でたとえると、どこでジャンプすればよいのか、どのアイテムを入手すればいいのか、どの敵を倒せばよいのか……そうした情報まで提供されないと、遊ぶことができないのではないか、ということです。
昔はインターネットもありませんし、説明書も不備が多かったものですから、実際にプレイしながらゲームのルールを把握するより他にありませんでした。
今はインターネットがありますし、説明書はもちろん、ゲーム内のチュートリアルも充実していますので、ゲームのルールに迷うことは少ないと思います。
ただ、その遊び方までインターネットで検索し、その通りに遊ぶ……正直、私はその楽しさは理解できないのですが、これだけ世の中に娯楽が溢れていると、効率よくプレイすることが重要視されてるということは、理解できるような気がします。
……とはいえ、一つのゲームを何度も繰り返して遊んでいた私からすると、次から次へと遊ぶゲームを変えていくのは、勿体ないような気もしてしまいます。(昔は無料で遊べるゲームがなかったというのもありますが……!)
遊び方、楽しみ方は人それぞれですが、遊び方にまで効率を求めてしまうと、せっかくの娯楽が作業になってしまうのではないか……そう思えてなりません。
また、遊び方を自分でつくり出せないようになると、提供された遊び方が自分に合わないと感じた時、それはゲームが悪いという考えに直結してしまいます。
すると、ゲーム作りはプレイヤーから批判されないものを目指すことになり、結果、似たり寄ったりで、当たり障りのない、無難なゲームが出来上がります。
これはゲームに限らず、全ての娯楽にも言えることで、私が書いている小説という娯楽も、ただ作者から読者へ与えるものではなく、読者が作品を通じて何かを思い、考えることによって、面白さが生じるものではないかと私は思います。
ただ、読者が何も考えたくないとなれば、何も考えずに楽しめる作品を書くことになるのですが、そうした作品は繰り返し読まれる可能性が低く、連載と続刊が必須事項となり、結果、それが可能な作品のみが世に溢れていくことになります。
楽しみは与えられるものという考え方もあるとは思いますが、楽しみを自分でつくる……楽しもうという気持ちが、最高の娯楽となるのではないかと思います。
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