「夢オチ」の虚しさ
こんにちは、埴輪です!
世の中には様々な「物語の書き方」があると思いますが、「夢オチ」を奨励しているものはない……あるいは、あってもごく稀なのではないかと思います。
私の近況ノートに度々登場する「荒木飛呂彦の漫画術」では、「夢オチ」を「一番嫌いなダメ・パターン」と断言していますし、手塚治虫の「マンガの書き方」では、「わるい4コマ漫画の例」に「なんでも夢のオチにしてしまう」とあります。
いずれも「漫画の書き方」の本ではありますが、「物語の書き方」について書かれていることに違いはありませんから、ゲームや小説、映画、アニメといった「物語を扱うメディア」においても、同様のことが言えるのではないかと思います。
それもあってか、「夢オチ」に遭遇することは滅多にありませんが、それだけに遭遇してしまうと、本当に虚しくなってしまいます。(個人的な感想です!)
なぜ私が「夢オチ」に遭遇すると虚しくなってしまうかと言えば、これまで積み上げてきたものが全て否定されてしまったように感じてしまうからだと思います。
最悪の「夢オチ」は、物語の最後の最後に「夢だったのか……」となるもので、物語が面白ければ面白いほど、長ければ長いほど、虚しさは強くなります。(ちなみに、私が「夢オチ」と聞いてすぐに思い出すのは、漫画の「奇面組」です!)
流石にここまで露骨な「夢オチ」は、世に出る前に第三者が思いとどまらせて欲しいというのが本音ですが、その一方で、「夢だったのか……だけど」という物語は今でも見かけることがあるのではないでしょうか?
すなわち、夢だとされる世界で負った傷が残っていたり、そこで手に入れたアイテムが手元に残っていたり……その世界が存在したと思われる痕跡が見つかることで「夢じゃなかったんだ!」と判明するという物語です。
これなら演出として納得することもできますが、中には「夢じゃなかったんだ!」と気付くのが主人公やその周囲の限られた人物だけで、それ以外の人物にとっては夢と変わらないという物語もあり……これはこれで虚しくなると思います。
……そうです、私がなぜこんなことを書いているかといえば、まさにそんな物語と遭遇したからです!(どこで遭遇したかは……一応、伏せておきます!)
どのような物語かをざっくり説明すると、「主人公」と「仲間」が「助言者」の協力を経て問題を解決し、見事ハッピーエンドを迎えたのですが、その後日談として、「主人公」と「仲間」しか「助言者」のことを覚えていないことが発覚し、「助言者」の正体は「仲間」の心が生み出した存在だったのである……という内容です。
その物語では「助言者」が重要な役割を果たすだけでなく、「助言者」なしでは成立しない……「助言者」を助けるために「協力者」を募るといった場面もあり、多くの人が「助言者」を認識しているはずなのですが、後日談では「協力者」全員が「助言者」を忘れてしまっており、結局「仲間」(と「主人公」)が「助言者」がいたことをこれからも忘れずに云々という形で幕は閉じ……もやもやするというか、その前のハッピーエンドは何だったのかと思わずにはいられませんでした!
もしこの物語を後から見直した時に、「助言者」なしでも成立するように描かれていたとしたら、私もここまでもやもやすることはなかったと思います。
……ただ、「助言者」は「協力者」とも言葉を交わしていましたし、「助言者」がいたからこその面白さがあっただけに、それが全てなかったことにされてしまったことが……「主人公」と「仲間」が覚えているとはいえ、虚しかったのだと思います。
逆に言えば、それだけ物語やキャラクターに惹きつけられていたことは間違いありませんし、素晴らしい物語だったと思いますが、だからこそ、最後までプレイヤー……もとい、読者のことを考えて欲しかったなと思いますし、自分が物語を書く際にも、読者が虚しさを感じるようなラストにはすまいと強く思いました!
……今回は「夢オチ」に関して否定的なことを書いてしまいましたが、私ほど「夢オチ」に抵抗がない方や、「夢オチ」も悪くないと思っている方もいると思いますし、「夢オチ」を効果的に使っている作品もあるだろうと思います。
現に明らかな「夢オチ」……「妄想」に耽る場面などは、そこから一気に現実に引き戻されるギャップとあいまって、とても面白い演出になると思います!
こうした読者を楽しませる「夢オチ」は大いに活用すべきだと思いますが、読者の期待を裏切ってまで「夢オチ」にする必要はあるのか、その意図はどこにあるのか、それを望んでいるのは誰なのか、それ以外の方法はないのか……そういったことも、作者は物語を書く上で意識しなければならないのではないかと思います。
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